太陽光発電事業の会社が1/7基準でつまずく理由|減価償却で自然にクリアする方法と発電所開発を別会社で行う解決策

前回の記事では、本業が不動産賃貸業の会社が、労働者派遣事業許可の財産的基礎の要件「1/7基準」でつまずく事例を取り上げ、解決策として労働者派遣事業だけを別会社へ切り出す方法を解説しました。

今回は、その続編として、実務で立て続けに遭遇した別の実務ケースをご紹介します。今度の会社さんの本業は太陽光発電事業でした。不動産賃貸業ではなかった、それ以外は構造的にはほとんど同じです。ただ、太陽光発電事業には不動産賃貸業と決的に違う点があり、解決策がまったく変わってくる事例でした。

事例:本業が太陽光発電事業の派遣許可会社

労働者派遣事業許可を持っている会社さんですが、本業は太陽光発電事業でした。発電所(資産)はたくさん持っている一方で、銀行からの借り入れも非常に大きく、いわゆるレバレッジを利かせたバランスシートの会社さんでした。

発電所の建設や他社からの発電所の購入には長期の借入が使われますから、不動産賃貸業と同じく、設備を借入で取得し続けるビジネスである限り、負債の総額は膨らみ続けます。基準資産額も大きく、預金残高も十分にあるのに、負債が膨らんでいるために基準資産額が負債の総額の1/7に届かない――財産的基礎の要件をクリアできない、という状態です。実態を見れば事業の運営に支障がないことは明らかなのに、貸借対照表の比率分析だけではじかれてしまう。ここまでは前回の不動産賃貸業のケースと全く同じです。

不動産賃貸業と決的に違う点:減価償却が進むと自然にクリアしていく

では、何が違うのか。太陽光発電事業の場合、太陽光パネルやパワコン(パワーコンディショナ)の減価償却が進んでいくと、自然と1/7基準をクリアできる方向に向かっていくのです。

償却期間の間ずっと、売電収入が約束されている

太陽光発電設備を構成するパネルやパワコンの法定耐用年数は17年程度。一方、FIT(固定価格買取制度)による事業用太陽光発電の買取期間は原則20年です。つまり太陽光発電事業は、償却期間の間ずっと、固定価格の売電収入が長期間にわたって安定して入ってくるビジネスです。

償却キャッシュが借入返済の原資になる

ここがメカニズムの核心です。減価償却費は、現金の支出を伴わない費用です。売電収入から経費を支払っても残る「償却分のお金」は手元に残りますから、これを借入の返済に充てていれば、負債の総額は年々着実に減っていきます。

負債の総額が減れば、1/7基準のハードル(負債の総額÷7)も同じだけ下がります。一方、基準資産額は配当の方針にもよりますが大きく減りません。結果として、何もしなくても時間とともに1/7基準がクリアできる状態に近づいていくのです。

例えば、次のような会社を考えてみましょう(数字は説明のための例です)。

時点負債の総額負債の総額÷7基準資産額判定
更新申請時7億円1億円8,000万円未達
新規借入をやめて5年後4.2億円6,000万円8,000万円クリア

実際のペースは償却・返済計画や配当の方針によって変わりますが、「時間が経つほどハードルが下がる」点は変わりません。太陽光発電設備は償却が終われば帳簿価額がほぼゼロになる自己清算型の資産ですから、発電所を増やさないと決めた会社さんは、既存の発電所の償却と返済が自動的にデレバレッジを進めてくれるわけです。

前回の不動産賃貸業のケースでは、銀行が債務償還年数を長めに認める上に物件を取得し続ける限り借入が減らないため、「時間が解決してくれる」ことを期待しにくく、派遣事業の別会社分流という手術が必要でした。太陽光発電の場合、そこが決定的に違います。

解決策①:新規の発電所開発・購入をやめる

一つ目の解決策は、新規の発電所の開発や、他社からの太陽光発電所の購入をやめることです。

新しい発電所のための借入を増やさず、既存の発電所の償却キャッシュを返済に回し続ければ、前の表のとおり負債の総額は年々減っていき、更新のタイミングで1/7基準をクリアできる可能性が高くなります。ただし、太陽光発電事業をこれからも成長させたい会社さんにとっては、自ら事業拡大を止めるという決断が必要になります。手もとにキャッシュが積み上がるまで何年も待つことになる点は覚悟しておく必要があります。

解決策②:新規の開発・購入は別会社で行う

やめるのが嫌だったら――つまり発電事業を成長させ続けたい場合は、新規の発電所の開発や他社からの太陽光発電所の購入を、労働者派遣事業許可を持っている会社とは別の会社で行うようにします。

新しい発電所のための借入は別会社のバランスシートに乗りますから、許可を持っている本体の負債の総額は、既存の発電所の返済だけで着実に減っていきます。解決策①で消えてしまった成長戦略も、この方法ならそのまま続けられます。しかも、前回のような「既存の事業を切り出す」組織再編の手術は不要で、これからの開発・購入を別会社に振り分けるだけで済むので、不動産賃貸業のケースよりも手間は少なくて済みます。こうすることで、太陽光発電事業を本業とする会社さんが労働者派遣事業許可を持っていても、更新の際にも1/7基準をクリアしやすくなります。

進めるときの注意点

  • 追加借入を増やさないことが前提:既存の発電所の借り換え(リファイナンス)で負債が再び膨らむと、償却・返済によるデレバレッジ効果が消えてしまいます。
  • 配当の方針も影響します:利益を全額配当すると基準資産額が増えていきません。内部留保も残せる方針にしておくと、ハードルの低下に合わせて基準資産額も積み増せます。
  • 更新時期との逆算:いつ更新申請を迎えるかで、負債がいくら減っていれば間に合うかが決まります。償却・返済計画から逆算してスケジュールを立てましょう。
  • 別会社での開発にも資金計画を:新会社や既存の別会社で発電所を開発・購入する場合も、その会社自身の借入審査や税務・法務の整理が必要です。専門家と相談の上、進めるのが安心です。

まとめ

  • 太陽光発電事業の会社も、発電所を借入で増やし続ける限り、レバレッジの効いたバランスシートになり、1/7基準でつまずきやすい
  • ただし太陽光発電は、償却キャッシュが借入返済の原資になるため、減価償却が進むと自然と1/7基準をクリアできる方向に向かう
  • 解決策は2つ:新規の発電所開発・購入をやめるか、やめるのが嫌なら新規の開発・購入を別会社で行うか
  • 後者なら成長戦略を止めずに、更新の際にも1/7基準をクリアしやすくなる

財産的基礎の要件そのものの解説は「財産的基礎の要件とは」、要件をクリアするための他の選択肢は財産的基礎の要件クリアへ3つの選択肢でも解説しています。労働者派遣事業許可の財産的基礎の要件について、監査証明や合意された手続、要件クリアの方法にお悩みの際は、お気軽にご相談ください。当サイトでは、労働者派遣事業許可申請のための監査証明・合意された手続を専門に提供しています。

今すぐお電話ください!

預金不足の解決策、純資産不足の解決策、合意された手続、監査のお問い合わせなどお気軽にお問い合わせください。

投稿者プロフィール

jinzaihaken
jinzaihaken
労働者派遣事業許可に必要な監査や合意された手続に精通し、数多くの企業をサポートしてきました。日々の業務では「クライアントファースト」を何よりも大切にし、丁寧で誠実な対応を心がけています。監査や手続を受けなくても財産的基礎の要件をクリアできる場合には、そちらを優先してご提案するなど、常にお客様の利益を第一に考える良心的な姿勢が信条です。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。