【派遣許可の財産的基礎】つまずきやすい7つの誤解|「資本金2,000万円」では足りない理由

労働者派遣事業の許可における財産的基礎の要件は、数字の見方が少し独特なためか、思い込みによるつまずきが非常に多い分野です。実務でよくお見かけする誤解を7つにまとめました。

誤解① 「資本金が2,000万円あれば財産要件をクリアできる」

判定に使われるのは資本金の額ではなく基準資産額です。資本金が2,000万円あっても、多額の負債や過去の累積赤字(繰越利益剰余金のマイナス)があれば、基準資産額は2,000万円に届きません。逆に、資本金が小さくても利益剰余金が積み上がっていれば要件を満たせます。

まずは直近の決算書(貸借対照表)から、許可基準上の基準資産額がいくらになるのかを正確に試算することが第一歩です。

誤解② 「借入して預金を増やせば、基準資産額も増える」

借入は、資産(預金)と負債が同時に同じ額だけ増えます。基準資産額は「資産−負債」ですから、借入では基準資産額は1円も増えません。

しかも、負債総額が増えるため、③の「基準資産額 ≧ 負債総額 ÷ 7」のハードルは上がります。借入で改善できるのは現金・預金の要件だけ、と覚えてください。

誤解③ 「預金は役員個人の口座でもよい」

現金・預金の要件は自己名義(会社名義)の現金・預金で判定されます。役員個人の預金や、役員からの借入金として入れたお金は該当しません。また、この要件も事業所ごとに判定される点にご注意ください。

誤解④ 「事業所が増えても必要額は同じ」

基準資産額2,000万円・現金預金1,500万円は、いずれも事業所数を掛けた額が必要です。

事業所数基準資産額現金・預金
1事業所2,000万円以上1,500万円以上
2事業所4,000万円以上3,000万円以上
3事業所6,000万円以上4,500万円以上

複数拠点での同時スタートを計画している場合は、資金計画に直結します。

誤解⑤ 「純資産額と基準資産額は同じ」

近い金額ですが、同じではありません。基準資産額は、資産の総額から負債の総額を控除したうえで、さらに営業権(のれん)や繰延資産を控除した金額です。これらがある会社では、純資産額よりも基準資産額のほうが小さくなります。

純資産額が2,000万円を超えているから安心、とは言い切れない理由がここにあります。

誤解⑥ 「顧問の税理士・会計士に証明してもらえばよい」

月次決算書に対する監査証明・合意された手続には独立性が求められます。日頃その会社の記帳や決算に関与している先生は、この証明業務を引き受けられません。

顧問の先生にそのまま依頼して、あとから差し戻しになるケースは実務でよくあります。証明は、日頃の会計に関与していない外部の公認会計士・監査法人に依頼する必要があります。依頼先の選定は、早い段階で確認しておきましょう。

誤解⑦ 「直近の決算で満たせなければ、もう更新できない」

そうではありません。要件を満たした月次(または中間)決算書を作成し、公認会計士の監査証明または合意された手続実施結果報告書を添えることで、更新は可能です。許可の有効期間の更新に限り、当面の間、監査報告書に代えて「合意された手続実施結果報告書」の提出でよいとされています。

ただし、更新申請の期限(有効期間が満了する日の3か月前)から逆算して動く必要があります。詳しくは関連記事をご覧ください。

おまけ:有料職業紹介事業も持っている場合

派遣事業と有料職業紹介事業の両方の許可を持っている会社では、資産を合算するのではなく、それぞれの基準を満たしているかを見ます。紹介事業側にも基準資産額の要件がありますので、別々に確認してください。

まとめ

  • 判定されるのは資本金ではなく基準資産額。純資産額からさらに営業権・繰延資産を控除する
  • 借入では基準資産額は増えない。借入で改善できるのは現金・預金の要件だけ
  • 現金・預金は会社名義で、事業所数を掛けた額が必要
  • 月次決算書への証明は独立性が要件。顧問の先生には依頼できない
  • 直近の決算で満たせなくても、月次決算+証明で更新の道はある

思い込みのまま進めてしまうと、期限直前に慌てることになります。まずは直近の決算書で正しく計算してみてください。

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投稿者プロフィール

jinzaihaken
jinzaihaken
労働者派遣事業許可に必要な監査や合意された手続に精通し、数多くの企業をサポートしてきました。日々の業務では「クライアントファースト」を何よりも大切にし、丁寧で誠実な対応を心がけています。監査や手続を受けなくても財産的基礎の要件をクリアできる場合には、そちらを優先してご提案するなど、常にお客様の利益を第一に考える良心的な姿勢が信条です。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。