労働者派遣事業と有料職業紹介事業を同時申請する場合の事業所要件について

よくあるご質問:事業所は3部屋必要なのでしょうか?

ここ数ヶ月で、労働者派遣事業許可と有料職業紹介事業許可を同時に申請されるお客様から、立て続けに4件も同じご質問をいただきました。

「労働者派遣事業には20平米以上で2つに区切られた事業所が必要、さらに有料職業紹介事業にも別の事業所が必要となると、最低でも3部屋用意しなければならないのでしょうか?」

この疑問は非常に理にかなったものです。それぞれの許可申請に事業所要件があることから、多くの事業者様が「別々に用意しなければならないのでは」と心配されるのも当然といえます。

結論:2部屋(合計20平米以上)で両方の許可申請が可能です

結論から申し上げますと、事業所は2部屋で足ります。具体的には、以下の要件を満たせば、労働者派遣事業許可と有料職業紹介事業許可の両方を同時に申請することができます。

  • 合計面積が20平米以上であること
  • パーテーション等で2つの区画に区切られていること

つまり、労働者派遣事業用の事業所と有料職業紹介事業用の事業所を別々に用意する必要はなく、同一の事業所で両方の事業を行うことが認められているということです。

これはどういう意味か? 事業所の「兼用」が認められています

従来、労働者派遣事業と有料職業紹介事業は別々の法律で規制されており、それぞれ独立した許可申請が必要でした。このため、多くの事業者様が「それぞれに専用の事業所が必要なのでは」という誤解をされるのは無理もありません。

しかし、平成27年の労働者派遣法改正以降、両事業を一体的に運営することを前提とした制度設計がなされ、事業所の兼用が明確に認められるようになりました。

これにより、以下のようなメリットが生まれています:

  • コスト削減:別々に賃料を支払う必要がなくなります
  • 業務効率化:一つの場所で両事業を管理できます
  • スタート時の負担軽減:初期投資を抑えて事業を開始できます

ただし、「兼用できる」ということは「最低限の要件を満たさなくてよい」という意味ではありません。あくまで労働者派遣事業の事業所要件を満たした上で、その同じ事業所を有料職業紹介事業にも使用できるという意味です。

それぞれの事業の事業所要件を確認しましょう

労働者派遣事業の事業所要件

労働者派遣事業許可を取得するためには、事業所について以下の要件を満たす必要があります。

面積要件

  • おおむね20平米以上の面積を有すること
  • 純粋な事業活動スペースとして20平米が必要です

区画要件

  • 事業所が適切にパーテーション等で区切られ、独立した事業運営が可能な構造であること
  • 具体的には、以下の2つの区画が必要です:
    • 業務を行う区画:派遣労働者との面談、登録手続き、事務作業等を行うスペース
    • 個人情報を管理する区画:派遣労働者や派遣先企業の個人情報・機密情報を保管・管理するスペース

独立性要件

  • 他の事業所、他の法人の事業所と明確に区分されていること
  • 施錠可能な構造であること
  • 専用の出入口があることが望ましい(共用でも可だが、独立性を示せることが重要)

使用権限

  • 事業所の使用権限を有していること(自己所有または賃貸借契約等)
  • 使用目的が「事業用」であることが契約書等で確認できること

有料職業紹介事業の事業所要件

有料職業紹介事業許可を取得するための事業所要件は以下の通りです。

面積要件

  • 明確な最低面積の規定はありませんが、事業を適切に行える十分な広さが必要
  • 実務上は、概ね10〜15平米程度あれば問題ないとされています

設備要件

  • 求職者との面談スペース
  • プライバシーが保護される環境
  • 個人情報を適切に管理できる設備

独立性要件

  • 他の事業と明確に区分された専用スペースであること
  • ただし、労働者派遣事業等の関連事業との兼用は認められています

使用権限

  • 事業所の使用権限を有していること

労働局における実務上の取扱い:事業所兼用の詳細

基本的な考え方

労働局では、労働者派遣事業と有料職業紹介事業の両方を行う場合、以下の基本方針で審査を行っています。

事業の親和性の認識

両事業はいずれも労働力需給調整システムの一環として位置づけられており、事業の性質が類似しています。このため、同一事業者が両事業を一体的に運営することは合理的であり、むしろ効率的な事業運営につながると考えられています。

事業所兼用の原則的容認

上記の認識に基づき、労働者派遣事業の事業所要件を満たしている事業所であれば、その同じ事業所を有料職業紹介事業にも使用することが原則として認められています。

具体的な審査のポイント

実際の許可申請において、労働局は以下の点を確認します。

1. 労働者派遣事業の要件充足

まず、労働者派遣事業の事業所要件(20平米以上、適切な区画)が満たされているかを確認します。これが第一の基準となります。

2. 有料職業紹介事業の業務遂行可能性

次に、その事業所で有料職業紹介事業も適切に行えるかを確認します。具体的には、

  • 求職者との面談スペースが確保されているか
  • 個人情報管理が適切に行える環境か
  • 両事業を並行して行っても業務に支障がないか

3. 個人情報管理の適切性

両事業とも大量の個人情報を取り扱うため、以下が重視されます。

  • 鍵付きキャビネット等、適切な保管設備があるか
  • アクセス権限が適切に管理されているか
  • 情報漏洩防止の措置が講じられているか

4. 事業所レイアウトの合理性

提出される事業所の図面(平面図)において、

  • 面談スペース、事務スペース、書類保管スペースが明確に示されているか
  • 動線が適切に設計されているか
  • 来客(派遣労働者・求職者)のプライバシーに配慮されているか

よくある事業所レイアウトの例

実務上、以下のようなレイアウトが一般的です。

パターン1:面談室型(推奨)

┌─────────────────────────────┐
│                             │
│  【面談・登録室】12平米     │
│  ・面談デスク               │
│  ・待合スペース             │
│  ・受付カウンター           │
│                             │
├─────────────────────────────┤
│  【事務室・書類保管室】8平米│
│  ・事務デスク               │
│  ・鍵付きキャビネット       │
│  ・PC・サーバー             │
│  ・コピー機等               │
└─────────────────────────────┘

このレイアウトでは、

  • 合計20平米を確保
  • パーテーションで2室に区分
  • 上の部屋で派遣登録面談・職業紹介面談の両方を実施
  • 下の部屋で事務処理・個人情報管理を実施

パターン2:オープン型

┌─────────────────────────────┐
│                             │
│  【メインオフィス】15平米   │
│  ・複数の事務デスク         │
│  ・面談ブース               │
│  ・待合スペース             │
│                             │
├─────────────────────────────┤
│  【書類保管・個人情報管理室】│
│  5平米                      │
│  ・鍵付きキャビネット       │
│  ・サーバー                 │
└─────────────────────────────┘

このレイアウトでは、

  • 合計20平米を確保
  • メインオフィスで両事業の業務を実施
  • 個人情報は専用の施錠可能な部屋で厳重管理

注意すべき実務上のポイント

同時申請の手続き

労働者派遣事業と有料職業紹介事業を同時に申請する場合

  • 申請書類は別々に準備する必要があります
  • ただし、事業所に関する書類(賃貸借契約書、平面図等)は共通して使用できます
  • 事業所の写真も共通のものを使用可能です

事業所の表示

両事業を行う場合、事業所の入口や看板には、

  • 「労働者派遣事業」と「有料職業紹介事業」の両方を行っていることを明示
  • それぞれの許可番号を掲示

運用上の留意点

事業開始後の運用においては、

  • 派遣労働者と求職者の個人情報を混同しないよう、適切に管理
  • 面談記録等の書類も事業ごとに明確に区分して保管
  • 定期的な監査に備え、両事業が適切に運営されていることを示せる体制を整備

資産要件との関係について

事業所要件とは別に、労働者派遣事業許可には一定の資産要件があります。これについても補足しておきます。

労働者派遣事業の資産要件

  • 基準資産額が2,000万円以上
  • 現預金残高が1,500万円以上
  • 基準資産額が負債総額の7分の1以上

有料職業紹介事業の資産要件

  • 基準資産額が500万円以上
  • 現預金残高が150万円以上

同時申請の場合

両事業を同時に申請する場合、より厳しい労働者派遣事業の要件を満たせば、有料職業紹介事業の資産要件も自動的にクリアすることになります。

これは事業所要件と同じ考え方です:より厳格な要件を満たせば、緩やかな要件も同時に満たされるという関係です。

監査証明と合意された手続について

当事務所では、労働者派遣事業許可申請に必要な以下の業務を承っております。

監査証明業務

新規許可申請時に必要な監査証明業務をお引き受けしております。

対象書類

  • 月次貸借対照表
  • 月次損益計算書

合意された手続業務

許可更新申請に際して資産要件を満たしていることを確認する手続を実施し、報告書を作成します。

実施内容

  • 月次決算書と総勘定元帳との突合
  • 預金残高証明書のチェック
  • 税務申告書のチェック

よくいただくご質問(FAQ)

Q1: 事業所を移転した場合、両方の許可について変更届が必要ですか?

A: はい、労働者派遣事業、有料職業紹介事業それぞれについて変更届出が必要です。移転前に必ず労働局に相談されることをお勧めします。

Q2: 最初は労働者派遣事業のみで開始し、後から有料職業紹介事業を追加する場合、事業所の改装が必要ですか?

A: すでに労働者派遣事業の事業所要件を満たしていれば、基本的に改装は不要です。ただし、有料職業紹介事業の業務に必要な設備(面談スペース等)が十分でない場合は、レイアウト変更が必要になることがあります。

Q3: 自宅の一部を事業所として使用できますか?

A: 要件を満たせば可能です。ただし、以下の点に注意が必要です:

  • 居住スペースと事業スペースが明確に区分されていること
  • 事業専用の入口があること(または来客時の動線が適切であること)
  • プライバシーが確保できること
  • 賃貸の場合は、事業使用について貸主の承諾が得られていること

Q4: 2部屋の面積配分に決まりはありますか?

A: 厳密な規定はありませんが、実務的には以下を考慮していらっしゃる事業者様が多いようです。

  • 個人情報管理室は最低限5平米程度は必要
  • 面談・事務を行う部屋は10〜15平米程度は必要
  • 実際の業務量や来客数に応じて適切に配分してください

Q5: バーチャルオフィスやシェアオフィスでも申請できますか?

A: 原則として認められません。以下の理由からです。

  • 専用使用が確保できない
  • 施錠管理ができない
  • 個人情報保護の観点で問題がある

ただし、シェアオフィスでも、完全に区画された専用スペースを賃貸借契約で確保し、要件を満たせば認められる場合もあります。事前に労働局に確認することをお勧めします。

まとめ

労働者派遣事業許可と有料職業紹介事業許可を同時に申請する場合、事業所は以下の要件を満たせば、両方の事業に使用できます。

必要な要件

  • 合計20平米以上の面積
  • パーテーション等で2区画に区切られている
  • 個人情報管理が適切に行える設備
  • 面談スペースの確保

不要なこと

  • 3部屋目の用意
  • それぞれの事業専用の事業所の確保
  • 事業ごとの別々の賃貸借契約

この取扱いにより、事業開始時のコストを抑えつつ、両方の許可を取得して事業の幅を広げることが可能となります。

ただし、事業所要件を満たすことは許可取得の一要件に過ぎません。資産要件、人的要件、事業運営体制等、他の要件についても十分に準備する必要があります。

当事務所では、労働者派遣事業許可申請および有料職業紹介事業許可申請に必要な監査証明、合意された手続を、豊富な実績に基づいて提供しております。事業所の要件についてのご相談も含め、お気軽にお問い合わせください。

許可取得に向けて、専門家として全力でサポートさせていただきます。

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投稿者プロフィール

jinzaihaken
jinzaihaken
労働者派遣事業許可に必要な監査や合意された手続に精通し、数多くの企業をサポートしてきました。日々の業務では「クライアントファースト」を何よりも大切にし、丁寧で誠実な対応を心がけています。監査や手続を受けなくても財産的基礎の要件をクリアできる場合には、そちらを優先してご提案するなど、常にお客様の利益を第一に考える良心的な姿勢が信条です。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。