職業紹介と労働者派遣と請負は、どこで線が引かれるのか

人手が足りない。採用は難しい。現場は回したい。そうなると、経営者や管理部門の頭の中では、つい全部が同じ箱に入ります。人を見つけて、企業に送り込み、仕事をしてもらう。その一連の流れは、見た目だけならよく似ているからです。けれども、法はそこで雑にしてくれません。誰が雇うのか。誰が指示を出すのか。誰が雇用の成立を世話するのか。誰が業務完成の責任を負うのか。この線が一本でも曖昧になると、事業の名前と実態がずれ始めます。

要するに、現場感覚では似て見えるものを、法は別物として切り分けているということです。ここでいう切り分けとは、単なる言葉の違いではありません。許可の要否、禁止される業務、契約の組み方、監督官庁への説明可能性までを左右する、事業構造の分類のことです。派遣許可申請や職業紹介許可申請の場面で本当に問われるのは、書類の作法より前に、まずこの分類を正しく説明できるかどうかです。

まず押さえるべきなのは、職業紹介という言葉の定義です。職業安定法第4条第1項は、職業紹介を、求人および求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあっせんすることと定めています。一見すると平易ですが、実務ではこの一文がかなり重い。なぜなら、この定義は四つの要素に分解して読まなければならないからです。

第一に求人です。ここでいう求人とは、報酬を支払って自己のために他人の労働力の提供を求めることです。第二に求職です。ここでいう求職とは、報酬を得るために自己の労働力を提供して職業に就こうとすることです。第三に雇用関係です。ここでいう雇用関係とは、報酬を支払って労働力を利用する使用者と、労働力を提供する労働者との間に生じる使用、従属の法律関係を指します。第四にあっせんです。ここでいうあっせんとは、求人者と求職者の間をとりもって、雇用関係が円滑に成立するよう第三者として世話をすることです。

少し砕いて言えば、単に人材の話題を運ぶだけでは足りません。企業と個人のあいだに入り込み、雇用の成立に向けて橋を架けているなら、それはもう職業紹介の中核に触れています。この橋を架ける行為こそが、法的にはあっせんです。ここでいうあっせんとは、連絡係のように見えて、実際には雇用成立プロセスに第三者として関与することそのものです。事業者の自己認識がどうであれ、実態としてこの要素がそろえば、法は職業紹介として見ます。

では、どこからが職業紹介で、どこまでが単なる情報提供なのでしょうか。この境界が、経営者にとって最も危ない場所です。厚生労働省の資料は、自ら求人や求職を受理せず、求人や求職の申込みを勧誘するだけの業務や、職業紹介事業者に求人や求職を全数送付するだけの業務、あるいは求人申込みの意向を持つ者がいる旨の情報提供を行うだけの業務は、職業紹介に該当しないと整理しています。つまり、選別もせず、あっせんもせず、雇用成立の世話もしていないなら、そこはなお情報提供の領域にとどまる余地があります。

ただし、ここで安心すると危ない。なぜなら、実務はだいたいそこから一歩踏み込むからです。候補者を探し、声をかけ、就職を勧め、応募意思を固めさせ、企業につなぐ。この流れを事業として行うと、いわゆるスカウト行為であっても職業紹介事業の許可等が必要になります。ここでいうスカウト行為とは、求人者に紹介するため求職者を探索し、その者に就職を勧奨し、応じて求職申込みをした者をあっせんすることです。見た目には営業活動でも、法的には職業紹介です。言い換えると、集客の延長だと思っていたものが、実は許可事業の本体に入っていることがあるのです。

有料か無料かの区分も、経営判断では軽く見られがちですが、法はかなり形式に厳しい。営利目的かどうかは決定打ではありません。職業紹介に関して、手数料または報酬等の対価を受けて行うなら、有料職業紹介事業です。逆に、いかなる名義でも対価を受けないなら、無料職業紹介事業です。ここでいう対価とは、名目を変えれば逃げ切れるものではなく、実質的に職業紹介の見返りとして受け取る経済的利益を含むと理解すべきです。

この点は、現場ではかなり誤解されます。うちは紹介料を取っていない。だから無料だ。そう言いたくなる気持ちは分かります。けれども、たとえば会費を徴収している会員事業主にだけ無償で紹介する場合や、委託費の額が職業紹介の実績に応じて変動する場合は、厚生労働省資料上、実質的に職業紹介の対価を得ているものとして有料職業紹介事業と判断されます。無料だと思っていた事業が、実は有料だった。この認識のずれは、法務上の誤差ではありません。許可の前提を外す構造的な誤認です。

有料職業紹介事業を行うには、職業安定法第30条第1項に基づき、厚生労働大臣の許可が必要です。他方、無料職業紹介事業は誰でも自由にできるわけではなく、一般の者が行う場合は同法第33条の許可、学校等の施設の長が行う場合は第33条の2の届出、特別の法律により設立された法人で厚生労働省令所定のものが行う場合は第33条の3の届出という形で整理されています。さらに、地方公共団体は第29条に基づき無料職業紹介事業を行うことができますが、これも厚生労働大臣への通知が必要です。つまり、無料であればノールールという理解は誤りです。無償と無規制は別の概念です。ここでいう無規制とは、行政上の許可や届出を要しない状態のことですが、無料職業紹介はそこには入りません。

加えて、有料職業紹介事業には紹介できない職業があります。厚生労働省資料は、職業安定法第32条の11により、港湾運送業務に就く職業および建設業務に就く職業を、求職者に紹介してはならない職業として示しています。ここは実務上、業種名だけで雑に判断しないことが大切です。問題になるのは会社の看板ではなく、紹介しようとしている業務の中身です。

次に、よく混同される労働者派遣、労働者供給、請負の違いを見ていきます。ここは本当に混ざりやすい。人を先方で働かせるのだから、全部同じではないか。そう見えるのです。しかし、法の見方は違います。誰との間に雇用関係があるか。誰が指揮命令するか。誰が仕事の完成責任を負うか。この三点を押さえると、輪郭がはっきりします。

労働者派遣は、労働者派遣法第2条第1号で定義されています。自己の雇用する労働者を、その雇用関係の下で、かつ、他人の指揮命令を受けて、その他人のために労働に従事させることです。砕いて言えば、雇っているのは派遣元、日々の仕事の指示を出すのは派遣先です。この分離が派遣の本質です。したがって、労働者派遣事業を行おうとする者は、労働者派遣法第5条に基づき、厚生労働大臣の許可を受けなければなりません。しかも許可には有効期間があり、同法第10条では、初回許可は3年、更新後は5年とされています。派遣許可申請は一回通せば終わり、という種類の手続ではないのです。

これに対して、労働者供給は、供給契約に基づき労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、労働者派遣に該当するものは含まれません。そして職業安定法第44条により、労働者供給事業は、労働組合法上の労働組合などが厚生労働大臣の許可を受けて無料で行う場合を除き、原則として禁止されています。ここは強い言葉で理解した方がいい。グレーではなく、原則禁止です。ここでいう原則禁止とは、例外が限定列挙され、それ以外は事業として許されないという意味です。

では請負はどうか。請負そのものは適法に行えます。しかし、名前だけ請負で、中身が派遣になっていれば通りません。いわゆる偽装請負の問題です。厚生労働省の37号告示は、請負と派遣の区分基準を示しています。請負として認められるためには、請負事業主が自ら労働者に対して業務遂行方法を指示し、評価を行い、始業終業や休憩、休日、時間外労働に関する管理を自ら行い、服務規律や配置の決定変更も自ら行っていなければなりません。さらに、業務処理に要する資金を自ら調達し支弁し、法律上の事業主責任を負い、自己の機械設備や資材、または自らの企画や専門的技術経験に基づいて業務を処理している必要があります。要するに、請負とは、単に人を出すことではなく、自分の事業として独立して仕事を完成させることです。

ここでいう独立処理とは、注文主の一部署のように人を預けるのではなく、請負業者が自らの指揮命令と責任で業務を遂行することです。だから、現場で注文主が直接スタッフに指示を出し、勤怠を事実上管理し、配置まで決めているなら、契約書に請負と書いてあっても危うい。書面の名称ではなく、実態が見られます。経営者にとってこの点が重要なのは、数年後の監督調査や取引先の法務審査で、過去の運用まで説明を求められるからです。いま現場が楽だからといって、あとで整合性を取りにいくのはかなりしんどい。ここにあるのは法務の潜伏期間です。ここでいう潜伏期間とは、違和感が当面は表面化しないまま、許認可審査、行政調査、顧客監査、M&Aのデューデリジェンスといった将来の場面で一気に顕在化する時間差のことです。

さらに、紹介予定派遣という形態もあります。これは、派遣で働いてもらったあとに、その派遣先に雇用されることを予定して行う労働者派遣です。労働者派遣法第2条第4号は、派遣元事業主が、役務提供の開始前または開始後に、職業紹介を行い、または行うことを予定してする労働者派遣であって、その職業紹介により派遣労働者が派遣先に雇用される旨が、役務提供の終了前に労働者と派遣先の間で約されるものを含むと定義しています。平たく言えば、まず派遣で見て、その後採る、ではなく、採用につながることを前提に設計された派遣です。ここでは派遣と職業紹介の両方の理解が要る。片方だけ分かっていても足りません。

経営者や管理部門が本当に考えるべきなのは、自社のビジネスモデルがどの制度に乗っているのかを、言葉ではなく構造で説明できるかどうかです。応募は誰が受けるのか。報酬や手数料は何に対して発生するのか。雇用契約は誰と結ばれるのか。現場で指示を出すのは誰か。業務完成責任とコスト負担は誰が持つのか。これらを答えられないまま、サービスだけ先に走らせると、後から制度に合わせるのではなく、制度に引きずられて止まることになります。

派遣許可申請や職業紹介許可申請の場面では、財産要件や事業計画、役員要件、個人情報管理体制といった論点が当然に見られます。しかしその前提として、御社はいったい何の事業をしているのか、という最初の問いに詰まらないことが重要です。事業の自己定義が曖昧な会社は、管理の精度も曖昧になりやすい。これは感想ではなく、制度設計上の必然です。ここでいう制度設計上の必然とは、許可制度が、名称ではなく実態に応じて義務と責任を配分する仕組みだからです。

最後に、話を二つに割っておきます。経営に必要なのは、なんとなく似ている制度をまとめて扱うことではありません。違う制度を違うものとして扱うことです。現場の便利さを優先して境界をぼかすのか。それとも、将来の許認可、監査、取引先審査まで見据えて、構造を言語化できる会社になるのか。この二択です。前者は当面の摩擦を減らしますが、後者は将来の説明コストを減らします。短期の快適さを取るか、長期の整合性を取るか。人材ビジネスの管理とは、結局この選択に尽きます。

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jinzaihaken
jinzaihaken
労働者派遣事業許可に必要な監査や合意された手続に精通し、数多くの企業をサポートしてきました。日々の業務では「クライアントファースト」を何よりも大切にし、丁寧で誠実な対応を心がけています。監査や手続を受けなくても財産的基礎の要件をクリアできる場合には、そちらを優先してご提案するなど、常にお客様の利益を第一に考える良心的な姿勢が信条です。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。