有料職業紹介事業許可の更新申請に必要な「財産的基礎の要件」とは?
有料職業紹介事業の許可は、一度取得すれば永久に有効というわけではなく、有効期間ごとに更新申請が必要になります。更新申請でもさまざまな要件を満たす必要がありますが、その中でも特に重要なのが財産的基礎の要件です。
新規申請の際に財産的基礎の要件をクリアしていたとしても、更新時点で同じように問題がないとは限りません。事業を続ける中で赤字が続いたり、純資産が減少したりして、更新時には要件を満たしていないというケースもあります。
なお、有料職業紹介事業の財産的基礎の要件は、新規申請と更新申請で数値基準が異なります。 本記事では、更新申請の場合に絞って、必要な数値基準と実務上の注意点をわかりやすく解説します。
有料職業紹介事業の更新申請における財産的基礎の要件
有料職業紹介事業の更新申請では、財産的基礎について、新規申請と同様の考え方を前提としつつ、一部の数値基準が緩和されています。具体的には、厚生労働省の基準では、新規申請の「500万円」を「350万円」と読み替えて適用し、さらに新規申請時の現金預貯金要件は適用しないとされています。
つまり、更新申請で確認される財産的基礎は、基本的に次の内容です。
基準資産額の要件
基準資産額 ≧ 350万円 × 事業所数
であることが必要です。 厚生労働省
ここでいう基準資産額とは、
資産総額 − 負債総額
で計算する金額ですが、資産には繰延資産及び営業権を含めません。 したがって、会計上の純資産と許可基準上の判断が完全に一致するとは限らず、更新申請の前には貸借対照表の中身を丁寧に確認する必要があります。
更新申請では現金預金要件は不要です
更新申請の大きな特徴は、新規申請で必要だった現金預金要件が適用されないという点です。
新規申請では「自己名義の現金・預貯金が150万円+加算額以上あること」が必要でしたが、更新申請ではこの要件は外れます。
そのため、更新申請では、まずは基準資産額が事業所数に応じた基準を満たしているかを中心に確認することになります。新規申請のときよりもハードルが下がる面はありますが、だからといって安心はできません。純資産が傷んでいる会社では、更新時にこの基準を下回ってしまうことがあるためです。
事業所数ごとの必要額はいくら?
更新申請における基準資産額を、事業所数ごとに整理すると次のとおりです。 厚生労働省
| 事業所数 | 更新申請で必要な基準資産額 |
|---|---|
| 1か所 | 350万円以上 |
| 2か所 | 700万円以上 |
| 3か所 | 1,050万円以上 |
| 4か所 | 1,400万円以上 |
更新申請では、「350万円×事業所数」という形で判断されます。したがって、複数の事業所で許可を受けている場合は、その数に応じて必要な基準資産額も増えていきます。
新規申請との違いを整理すると
更新申請の記事では、この違いを明確に書いておくと非常にわかりやすくなります。
新規申請との主な違いは、次の2点です。
- 新規申請では基準資産額が500万円×事業所数だが、更新申請では350万円×事業所数
- 新規申請では自己名義の現金預貯金要件があるが、更新申請ではその要件は適用されない
この違いがあるため、新規申請のときには基準を満たせなかった会社でも、更新時には条件をクリアできることがあります。逆に、新規申請時は十分な資産があっても、その後の業績悪化で更新時に基準を割り込むこともあるため、更新前の事前チェックが非常に重要です。
直近決算書で要件を満たさない場合はどうする?
更新申請で実務上よく問題になるのが、直近の決算書では基準資産額の要件を満たしていないケースです。
この場合でも、直ちに更新できないと決まるわけではありません。厚生労働省の運用では、要件を満たした中間決算書又は月次決算書を提出して審査を受ける、いわゆる事後申立てが認められています。
原則として、このような事後申立てには、公認会計士等による監査証明を付けて提出する方法が想定されています。したがって、更新時点に向けて増資や借入整理などを行い、財務内容を改善した場合には、その改善後の状況を適切な資料で示す必要があります。
更新申請では「合意された手続実施結果報告書」が使える場合があります
更新申請については、新規申請と異なる実務上のポイントがあります。
それは、当面の間、許可の有効期間の更新に係る事後申立てに限り、監査証明に代えて「合意された手続実施結果報告書」による取扱いも可能とされている点です。
これは新規申請にはない、更新申請特有の取扱いです。したがって、
「決算書で基準を満たさない場合には月次決算書で補えることがある」
だけでなく、
「更新申請では、監査証明だけでなく合意された手続による対応が認められる場合がある」
という点まで理解しておくと、実務的に非常に実益がありそうです。
もっとも、この取扱いは「当面の間」とされているため、実際の申請時には最新の運用を所管労働局に確認しながら進めるのが安全です。
更新申請前に確認しておきたい実務上のポイント
更新申請の前には、少なくとも次の点を確認しておくと安心です。
1 事業所数を確認する
更新時の基準資産額は事業所数に応じて増加します。複数拠点がある場合は、許可の対象となる事業所数を確認し、それに応じた必要額を計算する必要があります。
2 貸借対照表の中身を精査する
更新申請では、単に利益が出ているかどうかではなく、基準資産額が基準を満たしているかが問題になります。繰延資産や営業権を除いて再計算すると、思ったより数字が下がることがあります。
3 直近決算書で不足するなら早めに対応する
更新期限が近づいてから不足に気づくと、改善策の実行や中間・月次決算書の作成、公認会計士への依頼などが間に合わないことがあります。更新時は、早めに基準資産額を確認し、必要なら事後申立てを見据えて準備することが大切です。
4 新規申請と同じ感覚で考えない
新規申請のときは現金預金要件が大きなポイントになりますが、更新申請ではそこは不要です。その代わり、継続事業としての財務内容が維持されているかがより重要になります。
まとめ
有料職業紹介事業の更新申請では、財産的基礎として、
基準資産額が 350万円 × 事業所数 以上
であることが求められます。
そして、新規申請とは異なり、自己名義の現金預貯金要件は適用されません。 この点が、新規申請との最も大きな違いです。
また、直近の決算書で基準を満たさない場合でも、更新申請では中間決算書や月次決算書による事後申立てが認められており、さらに当面の間は合意された手続実施結果報告書による対応が可能な場合もあるとされています。
有料職業紹介事業の更新申請では、許可期限が迫ってから慌てるのではなく、事前に貸借対照表を確認し、基準資産額をチェックしておくことが非常に重要です。更新準備をスムーズに進めるためにも、早い段階で専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
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投稿者プロフィール

- 労働者派遣事業許可に必要な監査や合意された手続に精通し、数多くの企業をサポートしてきました。日々の業務では「クライアントファースト」を何よりも大切にし、丁寧で誠実な対応を心がけています。監査や手続を受けなくても財産的基礎の要件をクリアできる場合には、そちらを優先してご提案するなど、常にお客様の利益を第一に考える良心的な姿勢が信条です。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。





