派遣労働者の労働保険・社会保険の適用について~加入義務は派遣元?派遣先?
「派遣社員を受け入れることになったけど、社会保険の手続きは誰がやるの?」 「うちは派遣会社だけど、保険料の負担はどうなるんだっけ?」
労働者派遣事業に関わるうえで、避けては通れないのが労働保険・社会保険の問題です。特に、派遣労働者の保険加入義務が「派遣元」と「派遣先」のどちらにあるのかは、基本的ながらも非常に重要なポイントです。
今回は、この疑問に明確にお答えするとともに、派遣元と派遣先がそれぞれ果たすべき役割について、分かりやすく解説していきます。
結論:保険の加入義務は「派遣元事業主」にあります!
早速、結論からお伝えします。
派遣労働者の労働保険・社会保険に関する一切の責任と加入義務は、給与を支払い、雇用契約を結んでいる「派遣元事業主(派遣会社)」にあります。
派遣先企業は、派遣労働者に仕事の指示(指揮命令)を行いますが、直接の雇用主ではないため、保険料の支払いや加入手続きを行う義務はありません。
【ポイント】
- 雇用主は誰か? → 派遣元
- だから、保険の責任者も → 派遣元
この大原則をまずはしっかりと押さえておきましょう。
そもそも「社会保険」ってどんなもの?
ここで一度、「社会保険」とは何かをおさらいしておきましょう。
社会保険とは、私たちが病気やケガ、出産、あるいは失業や老齢、障害などで生活が困難になるリスクに備えるための国が運営する強制加入の保険制度です。いわば、社会全体で支え合うセーフティネットのようなものです。
一般的に「社会保険」という言葉は、以下の保険制度をまとめた総称として使われます。
- 医療保険(健康保険):病気やケガをした時の医療費負担を軽減
- 年金保険(厚生年金保険):老後の生活や、障害・死亡に備える
- 介護保険:介護が必要になった時にサービスを受けるための保険
- 雇用保険:失業した時の生活を支え、再就職を促進
- 労働者災害補償保険(労災保険):仕事中や通勤中のケガ・病気に対応
これらの保険に加入することで、万が一の時にも安心して生活を続けられるようになっています。
派遣元事業主が負うべき「2つの義務」
派遣労働者の雇用主である派遣元事業主には、法律で定められた重要な義務が2つあります。
義務①:適正な加入手続き
派遣元事業主は、雇用する派遣労働者が法律で定められた加入要件(労働時間や日数など)を満たす場合、必ず労働保険・社会保険に加入させなければなりません。 これは企業の選択ではなく、法律で定められた絶対的な義務です。この義務を怠ると、罰則の対象となる可能性があります。
義務②:未加入の場合の「理由通知」
では、何らかの理由で派遣労働者が保険に加入していない場合はどうでしょうか。 その場合、派遣元事業主は、なぜ加入していないのか、その具体的な理由を派遣先企業に書面で通知しなければなりません。
例えば、以下のような理由が考えられます。 「週の所定労働時間が20時間未満のため、雇用保険の加入要件を満たしません」 「2ヶ月以内の短期契約のため、健康保険・厚生年金保険の加入対象外です」
このように、正当な理由があって未加入であることを、派遣先にきちんと説明する責任があるのです。
派遣先企業が担う「大切な役割」
「じゃあ、派遣先は何も気にしなくていいんだね」 そう思うのは早計です。派遣先企業にも、派遣労働者を守るための大切な役割があります。
それは、派遣元から受け取った「未加入理由の通知」をきちんと確認することです。
もし、通知に書かれた理由が、実際の働き方と明らかに異なっている場合(例えば、「週15時間勤務のため未加入」と書かれているのに、実際は毎日8時間フルタイムで働いているなど)、それは不適切な状態である可能性が高いです。
そのように、通知された理由が適正でないと考えられる場合、派遣先企業は「法律違反の疑いがありますので、きちんと社会保険に加入させてから派遣してください」と、派遣元事業主に対して是正を求めることが期待されています。
これは、違法な状態に加担しないため、そして何より、自社で働く派遣労働者の権利を守るための重要なチェック機能なのです。
まとめ
派遣労働者の保険については、以下の関係性を正しく理解しておくことが重要です。
- 派遣元:保険加入手続きと保険料負担の全責任を負う。未加入の場合は、派遣先への理由通知義務がある。
- 派遣先:直接の義務はないが、派遣元からの通知内容を確認し、不適切な場合は是正を求めるチェック機能を果たす。
派遣元と派遣先がそれぞれの責任と役割をきちんと果たすことで、派遣労働者は安心して働くことができ、健全な労働者派遣事業が成り立ちます。コンプライアンスを遵守し、三者にとってより良い関係を築いていきましょう。
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投稿者プロフィール

- 労働者派遣事業許可に必要な監査や合意された手続に精通し、数多くの企業をサポートしてきました。日々の業務では「クライアントファースト」を何よりも大切にし、丁寧で誠実な対応を心がけています。監査や手続を受けなくても財産的基礎の要件をクリアできる場合には、そちらを優先してご提案するなど、常にお客様の利益を第一に考える良心的な姿勢が信条です。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
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