月次決算書は「中小企業の会計に関する基本要領」のルールで作れば十分!簡単ルールで申請をスムーズに
J-GAAPは必須じゃない!基本要領の活用で負担軽減
J-GAAP(一般に公正妥当と認められる企業会計の基準)は、上場企業や大企業向けの厳格なルールで、詳細な注記や複雑な会計処理を要求します。月次決算書をJ-GAAPで作成しようとすると、退職給付引当金の計算など、手間と費用がかかります。特に中小企業の場合、経理担当者が少ない中でこれをこなすのは現実的ではありません。
ですが、安心してください。労働者派遣事業許可申請の文脈では、J-GAAPに従って月次決算書を作成することは必須ではありません。労働局の審査では、決算書の信頼性さえ確保されていればよく、基本要領に基づく簡易な決算書でOKなのです。私たちの事務所でも、数多くの申請支援でこの点をアドバイスしてきました。実際に、基本要領に従った決算書で許可が下りた事例は山ほどあります。
では、基本要領とは何でしょうか?これは、中小企業向けに策定されたシンプルな会計ルールで、正式名称は「中小企業の会計に関する基本要領」です。2012年に日本公認会計士協会、日本税理士会連合会、日本商工会議所、企業会計基準委員会の4団体が策定したもので、中小企業の多様な実態に配慮したものです。目的は、中小企業が会社法上の計算書類を作成する際に参照できる、簡単で実務的な会計処理を示すことです。
基本要領の最大の魅力は、その簡便さ。J-GAAPに比べて、理解しやすく、負担が少ない点です。例えば、月次決算書を作成する際、基本要領に従えば、日常の取引をシンプルに記録するだけで済みます。中小企業の実務慣行を考慮し、税務との調和も図られているので、法人税申告との連動もスムーズです。
ところで、よく似たものに、「中小企業の会計に関する指針」があります。これは基本要領と似ていますが、少し難易度が高いんです。「中小企業の会計に関する指針」は一定の水準を保ったものと位置づけられ、会計参与設置会社などに適した詳細な指針です。例えば、引当金の計上ルールなどがより細かく規定されており、専門知識が必要になる場合があります。労働局の許可申請では、「中小企業の会計に関する指針」準拠を強制されるわけではありません。監査を受けるからということで、どの基準に従って月次決算書を作成したらいいですかというお問い合わせを頻繁に頂戴しています。無理に中小指針に合わせようとして決算書を作成し直す企業様もいますが、それは不要です。基本要領で十分に審査が通るので、まずは簡単なルールから始めましょう。
「中小企業の会計に関する基本要領」の詳細解説
それでは、基本要領の内容を詳しく見ていきましょう。以下は、基本要領の主要なポイントをまとめたものです。これを読めば、「本当に簡単なんだな」と実感いただけるはずです。月次決算書作成の参考にしてください。
1. 目的
基本要領は、中小企業の多様な実態に配慮し、その成長に資するため、中小企業が会社法上の計算書類等を作成する際に、参照するための会計処理や注記等を示すものです。また、中小指針と比べて簡便な会計処理をすることが適当と考えられる中小企業を対象に、その実態に即した会計処理のあり方を取りまとめたものです。具体的には以下の考えに基づいています:
- 中小企業の経営者が活用しようと思えるよう、理解しやすく、自社の経営状況の把握に役立つ会計
- 中小企業の利害関係者(金融機関、取引先、株主等)への情報提供に資する会計
- 中小企業の実務における会計慣行を十分考慮し、会計と税制の調和を図った上で、会社計算規則に準拠した会計
- 計算書類等の作成負担は最小限に留め、中小企業に過重な負担を課さない会計
これを見てもわかるように、基本要領は「中小企業目線」で作られています。月次決算書を作成する際、経営者が「これならわかる!」と思えるシンプルさが魅力です。
2. 本要領の利用が想定される会社
基本要領の利用は、以下の会社を除く株式会社が想定されます:
- 金融商品取引法の規制の適用対象会社
- 会社法上の会計監査人設置会社
(注)中小指針では、「とりわけ、会計参与設置会社が計算書類を作成する際には、本指針に拠ることが適当である。」とされています。
また、特例有限会社、合名会社、合資会社又は合同会社についても、本要領を利用することができます。労働者派遣事業を営む中小企業の大半がこの対象に該当するので、安心して適用可能です。基本要領は法令等によって強制されるものではないので、柔軟に使えます。
3. 企業会計基準、中小指針の利用
基本要領の利用が想定される会社において、J-GAAPや中小指針に基づいて計算書類等を作成することを妨げません。つまり、基本要領をベースにしつつ、必要に応じて高度な基準を追加できる柔軟性があります。許可申請では、基本要領だけで十分なので、無理に高度化する必要はありません。
4. 複数ある会計処理方法の取扱い
基本要領により複数の会計処理の方法が認められている場合には、企業の実態等に応じて、適切な会計処理の方法を選択して適用します。また、会計処理の方法は、毎期継続して同じ方法を適用する必要があり、これを変更するに当たっては、合理的な理由を必要とし、変更した旨、その理由及び影響の内容を注記します。これにより、月次決算書の継続性が保たれますが、ルール自体はシンプルです。
5. 各論で示していない会計処理等の取扱い
基本要領で示していない会計処理の方法が必要になった場合には、企業の実態等に応じて、企業会計基準、中小指針、法人税法で定める処理のうち会計上適当と認められる処理、その他一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行の中から選択して適用します。つまり、基本要領にない部分は柔軟に他のルールを借りられるので、月次決算書作成で詰まる心配が少ないんです。
6. 国際会計基準との関係
基本要領は、安定的に継続利用可能なものとする観点から、国際会計基準の影響を受けないものとします。グローバル基準の複雑さを気にせずに済む点も、中小企業向きです。
7. 本要領の改訂
基本要領は、中小企業の会計慣行の状況等を勘案し、必要と判断される場合に、改訂を行います。将来的にも中小企業の実態に合わせて進化するので、安心です。
8. 記帳の重要性
基本要領の利用にあたっては、適切な記帳が前提とされています。経営者が自社の経営状況を適切に把握するために記帳が重要です。記帳は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って行い、適時に、整然かつ明瞭に、正確かつ網羅的に会計帳簿を作成しなければなりません。月次決算書の場合、日々の売上や経費をエクセルでまとめるだけでOK。基本要領は、この記帳をシンプルにサポートします。
9. 本要領の利用上の留意事項
基本要領の利用にあたっては、以下の原則にも留意する必要があります: ① 企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。(真実性の原則) ② 資本取引と損益取引は明瞭に区別しなければならない。(資本取引と損益取引の区分の原則) ③ 企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。(明瞭性の原則) ④ 企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。(保守主義の原則) ⑤ 株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。(単一性の原則) ⑥ 企業会計の目的は、企業の財務内容を明らかにし、企業の経営状況に関する利害関係者の判断を誤らせないようにすることにある。このため、重要性の乏しいものについては、本来の会計処理によらないで、他の簡便な方法により処理することも認められる。(重要性の原則)
これらの原則は、会計の基本ですが、基本要領ではこれらを最小限の負担で実現できるように設計されています。例えば、重要性の原則により、細かな取引は簡便処理でOK。月次決算書で小さな経費を一つ一つ詳細に分析する必要はありません。
なぜ基本要領が簡単で月次決算書作成にぴったりなのか?
基本要領の簡単さを、具体例で説明しましょう。たとえば、派遣事業の月次決算書で、売上を計上する場合。J-GAAPだと、収益認識の詳細ルール(いつ売上を認識するか?)が複雑ですが、基本要領では実務慣行に基づき、納品時点でシンプルに計上できます。減価償却も、税務基準に沿った定率法・定額法で十分。棚卸資産(派遣事業では少ないですが)も、原価法の簡単版でOKです。
私たちの事務所で支援したA社(中小派遣企業)の場合、最初は中小指針を適用しようとして苦労していましたが、基本要領に切り替えたら、経理担当者が1日で月次決算書を作成できるようになりました。結果、監査証明もスムーズに発行でき、許可申請が無事通りました。中小指針は詳細すぎて、注記項目が増えがちですが、基本要領なら注記も最小限。労働局も「基本要領準拠で問題なし」と判断してくれます。
もちろん、基本要領を使っても、監査証明は公認会計士の仕事です。私たちは、決算書の数字を検証します。
実務アドバイス:申請前にチェックすべきポイント
許可申請を成功させるために、以下のアドバイスを:
- 早めの準備:月次決算書は申請月の前月分が必要。基本要領で作成を習慣化しましょう。
- 記帳の徹底:基本要領の前提は正しい記帳。クラウド会計ソフトを使うと便利です。
- 専門家相談:中小指針か基本要領か迷ったら、当事務所にご相談を。無料相談も可能です。
- 注意点:基本要領は強制でないので、他の基準の採用も可能。ただし、一貫性を保つこと。
万一、決算書に不備があれば、労働局から補正を求められるので、事前の準備が何より重要です。
まとめ:当事務所がサポートします
いかがでしたか?労働者派遣事業許可申請の月次決算書は、基本要領に従えば簡単!J-GAAPや中小指針に無理に合わせなくても、労働局は受け付けてくれます。このルールを知るだけで、申請の負担が大幅に減るはずです。私たちの事務所は、そんな中小企業様の味方。監査証明の引き受けから、基本要領の適用アドバイスまで、トータルサポートします。お気軽にお問い合わせください。あなたのビジネスを一緒に成長させましょう!
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投稿者プロフィール

- 労働者派遣事業許可に必要な監査や合意された手続に精通し、数多くの企業をサポートしてきました。日々の業務では「クライアントファースト」を何よりも大切にし、丁寧で誠実な対応を心がけています。監査や手続を受けなくても財産的基礎の要件をクリアできる場合には、そちらを優先してご提案するなど、常にお客様の利益を第一に考える良心的な姿勢が信条です。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
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