子会社からの配当で預金要件クリア!労働者派遣事業許可更新の成功事例
「労働者派遣事業を始めたいけど、許可のハードルが高い」
「許可更新時期の決算を目前に、財産的基礎の要件がクリアできそうにない!」
労働者派遣事業の許可申請や更新を目指す経営者の方から、このような悲痛な声をお聞きすることがあります。特に、許可の条件である財産的基礎の要件は、多くの企業にとって大きな壁となります。
しかし、諦めるのはまだ早いかもしれません。今回は、決算直前に預金要件不足という絶体絶命のピンチに陥りながらも、”ある方法”を使って見事に要件をクリアしたA社の成功シナリオをご紹介します。この話は、グループ会社をお持ちの経営者にとって、大きなヒントになるはずです。
そもそも「財産的基礎の要件」とは?
まず、おさらいです。なぜ労働者派遣事業の許可に「財産」が求められるのでしょうか?
それは、派遣労働者の雇用を守り、事業を安定的に運営する能力があるかを国が確認するためです。万が一の事態が起きても、給与の支払いや社会保険料の納付が滞らないように、一定の財務的な体力が求められるのです。
具体的には、直近の決算書において、以下の3つの基準をすべて満たす必要があります。
【財産的基礎の要件(一番クリアしやすいケース)】
- (資産-負債)である純資産額が2,000万円以上あること
- 純資産額が、負債の総額の7分の1以上であること
- 事業資金として自己名義の現金・預金の額が1,500万円以上あること
特に③の「現金・預金1,500万円以上」という要件は、会社の運転資金との兼ね合いもあり、決算日時点でクリアするのが意外と難しいポイントです。
【事例】絶体絶命!決算2ヶ月前に預金不足が発覚したA社
派遣事業許可の更新申請を目指すA社。決算まであと2ヶ月と迫ったある日、顧問税理士から衝撃の報告を受けました。
税理士:「社長、このままいくと決算日の着地見込みでは、預金残高が1,000万円ほどになりそうです。派遣許可更新の要件である1,500万円に500万円足りません…」
A社社長:「なんだって!? 純資産や他の要件はクリアできるのに、預金だけが足りないなんて。今から500万円もどうやって工面すればいいんだ。」
融資を受けるには時間が足りない。役員からの借入も難しい。A社長は頭を抱えてしまいました。
逆転の発想!「子会社」という資産に着目
途方に暮れていたA社長ですが、ふと自社の100%子会社であるB社の存在を思い出しました。
「待てよ、B社は事業が好調で、資金繰りにもかなり余裕があったはずだ。」
早速、B社の経理担当者に確認すると、驚きの事実が判明します。なんと、B社には当面の支払いに充てる資金とは別に、500万円の定期預金があったのです。
ここでA社長と顧問税理士は、ある打ち手を思いつきました。
「子会社B社から、親会社であるA社へ配当金を支払ってもらおう!」
成功へのステップ:子会社からの配当実行
このアイデアは、まさにA社にとっての光明でした。A社はすぐに行動に移します。
【実行したステップ】
- 子会社B社の臨時株主総会を開催
- 子会社B社の株主は、親会社であるA社100%です。そのため、株主総会の開催や意思決定は非常にスムーズに進みます。
- 剰余金の配当を決議
- B社の臨時株主総会で、「株主であるA社に対し、剰余金から500万円を配当する」という議案を提出し、決議しました。
- (※配当は、会社の剰余金の範囲内でしか行えません。幸いB社には十分な利益剰余金がありました。)
- A社へ500万円を送金
- 決議に基づき、子会社B社は親会社A社の口座へ500万円を送金しました。
この結果、どうなったでしょうか?
A社の預金残高は、もともとの1,000万円に500万円が加わり、見事1,500万円に到達。 その後の決算で作成された貸借対照表には、現金・預金が1,500万円として計上され、A社は派遣事業許可の財産要件をすべてクリアすることができたのです!
この打ち手のすごいところ【税金のメリット】
この方法は、単に資金を移動させただけではありません。実は、税務上の大きなメリットもあります。
通常、会社が配当金を受け取ると「受取配当金」として収益(益金)になりますが、100%子会社からの配当は、法人税法上は益金不算入といって、全額が課税対象外となります。
つまり、A社は500万円の現金を手に入れながら、その500万円に対して法人税が一切かからなかったのです。資金を確保しつつ、税負担も増えない。まさに一石二鳥の打ち手でした。
会計の話とか、税金の話とか、ちょっと複雑でむつかしいですね。
順をおって解説します。
まず、受取配当って何? 会計の視点から見てみよう
受取配当の基本
想像してみてください。あなたの会社(A社)が、別の会社(B社)の株を持っているとします。B社が利益を出して株主に配当金を支払う場合、A社は「受取配当」としてそのお金を受け取ります。つまり、受取配当とは、他の会社から株主として受け取る配当金のことです。
これは、会社の「投資活動」の一環。たとえば、A社がB社の株を1,000万円分持っていて、B社が配当を1株あたり100円支払ったら、A社はそれに応じた金額を受け取るわけです。現金で入ってくることが多いですが、時には不動産などの現物で分配されることもあります。
損益計算書(PL)ではどう計上される?
損益計算書(Profit and Loss Statement、略してPL)は、会社の1年間の収益と費用をまとめたものです。ここで受取配当は、営業外収益として計上されます。なぜ「営業外」か? 会社の本業(例: 商品販売)とは関係ない、投資からの収入だからです。
具体例を挙げてみましょう:
- A社が本業で1億円の売上を上げ、費用が8,000万円かかったとします。営業利益は2,000万円。
- さらに、B社から500万円の配当金を受け取ったら、これは営業外収益として加算。
- 結果、経常利益は2,500万円になります。
つまり、損益計算書では受取配当がプラスの要素として会社の利益を押し上げます。会社の業績を評価する際、この部分が投資の成果を示す大事なポイントなんですよ!
貸借対照表(BS)の純資産に与える影響は?
貸借対照表(Balance Sheet、略してBS)は、会社の資産・負債・純資産のスナップショットです。受取配当を計上すると、以下のような影響が出ます:
- 資産が増える: 配当金は現金として入ってくるので、資産の「現金預金」が増加します。
- 純資産が増える: 損益計算書で利益として計上された分が、純資産の「利益剰余金」に加わります。純資産は会社の「自己資本」のようなもので、これが増えると会社の財務体力が強くなります。
例で言うと:
- A社が500万円の配当を受け取ったら、現金が500万円増え、利益剰余金も500万円増えます。
- 結果、貸借対照表の純資産合計が500万円アップ。株主から見ると、会社の価値が上がったように見えます。
ただし、注意点があります。配当金は「受け取った時点」で計上されるので、タイミングが大事。会計上はこれで会社の数字が良くなるんですが、ここから税金の話に入ります。会計の利益がそのまま税金の対象になるわけじゃないんですよ。
法人税法上の取り扱い:益金不算入って何?
会計の説明が終わったところで、本題の法人税法に繋げましょう。法人税は、会社の利益に対してかかる税金です。計算のベースは「益金」から「損金」を引いた額(課税所得)ですが、ここに「益金不算入」というルールが出てきます。
益金不算入の意味
益金不算入とは、簡単に言うと「この収入は課税対象の所得から除外してOK」という制度です。つまり、会計上は利益として計上されても、税金の計算では「なかったことに」できるんです!
なぜそんなルールがあるのか? それは二重課税を防ぐためです。考えてみてください:
- B社が利益を出して配当を支払うとき、B社はすでにその利益に法人税を払っています。
- A社がその配当を受け取ってまた税金を払ったら、同じお金に二度税金がかかることになります。これを避けるために、A社側では益金不算入が認められるんです。
具体的な取り扱いと条件
法人税法では、受取配当の益金不算入は以下のように扱われます。(簡略化版)
- 対象: 主に国内法人からの配当金。外国法人からのものは別途ルールがあります。
- 不算入の割合: 持株比率によって変わります。
- 持株比率が100%(完全子会社)の場合: 全額不算入。
- 持株比率が1/3超の場合: 全額不算入(ただし一部調整あり)。
- それ以外の関連法人: 50%不算入。
- 非関連法人: 20%不算入(ただし少額の場合など例外あり)。
- 計算例: A社がB社(非関連法人)から500万円の配当を受け取った場合、益金不算入額は500万円 × 20% = 100万円。残りの400万円だけが課税対象の益金になります。
これにより、税金の負担が軽減され、企業間の投資が促進されるわけです。ただし、益金不算入の適用には申告書の提出や条件確認が必要です。間違えると税務署から指摘されるので、顧問税理士さんに相談を!
注意点:会計と税務の違いを理解しよう
会計上は受取配当がそのまま利益になるのに、税務上は一部(または全部)が所得に含められない。初心者の方は「税金計算では配当が優遇される」と覚えておけばOKです。たとえば、会社の決算書を見るとき、このルールを知っていると実際の税負担が少ない理由がわかります。
会計と税務の取り扱いを整理すると
受取配当の会計面から法人税法の益金不算入までを解説しました。ポイントを振り返ると、
- 会計: 損益計算書で営業外収益として利益を増やし、貸借対照表の純資産を強化。
- 税務: 二重課税を避けるために益金不算入が適用され、税負担を軽くする。
これを知っておくと、投資先の配当を検討する際に役立ちます。
成功の秘訣と注意点:誰でも真似できる?
A社の成功ポイントは:
- 早期発見: 決算2ヶ月前の推計で問題を察知。顧問税理士の役割が大きい。
- グループ活用: 100%子会社という関係が、配当のしやすさと益金不算入のメリットを生んだ。
- 迅速実行: 臨時株主総会で即決。決算前に反映させたタイミングが完璧。
注意点として:
- 要件の正確確認: 労働者派遣事業許可の財産的基礎の要件は事業所数などで変わる。労働局のウェブサイト等で詳細をチェック。
- 税務リスク: 益金不算入の適用ミスで追徴課税の可能性あり。必ず税理士に相談。
- 一般適用: 子会社がない会社は、融資や増資を検討。配当はあくまで一例。
- 改正リスク: 法令は変わるので、最新情報を確認。
このシナリオは、グループ会社の資金を有効活用した好例です。許可申請でつまずきやすい預金要件を、賢くクリアできました!
まとめ:財産的基礎をクリアしてビジネスを加速させよう!
今日は、子会社配当を活用したA社の成功シナリオを通じて、労働者派遣事業許可の財産的基礎要件を解説しました。預金1,500万円の壁を、配当500万円で乗り越えるなんて、スマートですよね。前回の益金不算入の知識がここで活きるのも面白いポイントです。
もしあなたが派遣事業を考えているなら、早めに税理士に相談を。資金繰りの工夫で道が開けますよ! 質問があればコメントください。次回も役立つトピックでお会いしましょう。
(免責事項: この記事は一般的な説明であり、個別の法的・税務アドバイスではありません。実際の申請や手続きは、弁護士や税理士等の専門家にご相談ください。)
配当してくれる子会社がない?それなら、M&Aで「すでに要件を満たした会社」を手に入れよう!
子会社から配当を受け取って預金要件をクリアできるのは理想的ですが、「うちにはそんな便利な子会社がない…」という方も多いはず。そんなあなたに、もっと大胆で効率的な解決策をおすすめします。それはM&A(企業の買収・合併)です! すでに財産的基礎の要件を満たした会社を買収すれば、ゼロから苦労せずに許可申請へ直行できます。実際に、多くの起業家がこの方法で人材派遣ビジネスをスピーディーにスタートさせています。以下で、なぜM&Aが「夢の近道」になるのか、詳しくお話しします。読めばきっと「これだ!」と思えるはずですよ。
「早く人材派遣ビジネスを始めたいのに…」
「もっと効率的な方法はないのだろうか…」
もしあなたがそう感じているなら、ぜひ一度、私たちの提案に耳を傾けてください。
私たちがお勧めするのは、M&Aという、これまでとは全く異なるアプローチです。
なぜM&Aが、財産的基礎の要件クリアへの最短距離なのか? M&Aとは、簡単に言えば、すでに財産的基礎の要件をクリアしている会社を買収することです。つまり、あなたは、苦労して財産的基礎の要件をクリアするのではなく、最初からその要件を満たしている会社を手に入れることができるのです。
想像してみてください。買収したその日から許可申請準備を本格化できるんです。まるで「即戦力の財産的基礎」を手に入れるようなもの。実際に、M&Aを活用した企業は、競合に先駆けて市場を獲得し、急成長を遂げています。
M&Aには、以下のような、他にはない圧倒的なメリットがあります。
- 時間の大幅な短縮: 資本金の増額など従来の手続き(例: Debt Equity Swap)を行う場合、準備から登記完了まで、数ヶ月から半年以上の時間を要することがあります。しかし、M&Aであれば、手続き完了後すぐに労働者派遣事業許可申請ができます。貴重なビジネスチャンスを逃さず、すぐに収益化へ移行可能!
- コストの削減: 資本金の増額など手続きを行い、財産的基礎の要件をクリアするためのコストは決して安くありません。M&Aの場合、買収投資は発生しますが、総合的に見ると、新規申請よりも安価に済むケースが圧倒的に多いです。長期的に見て、投資回収が早いんです。
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投稿者プロフィール

- 労働者派遣事業許可に必要な監査や合意された手続に精通し、数多くの企業をサポートしてきました。日々の業務では「クライアントファースト」を何よりも大切にし、丁寧で誠実な対応を心がけています。監査や手続を受けなくても財産的基礎の要件をクリアできる場合には、そちらを優先してご提案するなど、常にお客様の利益を第一に考える良心的な姿勢が信条です。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
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