IT環境を監査計画に織り込む――監査計画の策定6で監査証明の土台を固める(人材派遣会社の実務)
1. 監査計画の策定6が言っていること:ITの使われ方に合った監査計画にする
監査計画の策定6は、企業が利用する情報技術(IT)が監査に及ぼす影響を検討し、その利用状況に適合した監査計画を策定することを求めています。言い換えると、紙とExcel中心の会社と、SaaSで勤怠・請求・会計・入金消込がつながっている会社とで、同じ監査のやり方は成立しない、という発想です。これは監査証明の品質に直結します。
2. 人材派遣会社はIT影響が大きい:売上の起点が「勤怠データ」だから
人材派遣会社では、売上の起点が勤怠(稼働時間)で、そこから請求、売掛金、入金消込へ連動します。つまり、ITの設計や運用のクセが、そのまま財務数値のクセになりやすい構造です。監査証明を出す立場では、金額そのものだけでなく、金額が生まれる仕組みを理解しておかないと、十分な説明力を持つ根拠を積み上げにくくなります。
3. 「ITの影響」を計画で検討するときの観点(実務向け)
監査計画の策定6を、計画書の言葉で終わらせないためには、少なくとも次の観点を押さえるのが有効です。
(1) 重要データはどこで発生し、どこで確定するか
人材派遣会社なら、勤怠打刻→承認→例外修正→締め→請求→会計計上→入金消込、のどこが「確定点」かを整理します。確定点が曖昧なシステムは、監査証明の難所になります。
(2) 例外処理と手入力はどこにあるか
例外処理が多いほど、統制リスクが上がりやすい。監査計画では、例外処理のサンプル設計や、ログの保存状況、承認ルートの実態を重点にします。
(3) 権限設計(ID管理)と変更管理
誰が単価マスタを変更できるか、勤怠を修正できるか、締めを解除できるか。変更がいつ誰によって行われたかが追えるか。これが弱いと、監査証明の前提が崩れやすいです。
(4) システム連携とインターフェース
勤怠SaaS→請求SaaS→会計ソフトの連携で、手作業の加工が挟まるとズレが出ます。どこでCSV加工が発生するか、加工ルールは固定か、レビューはあるかを計画に落とします。
4. ケース:人材派遣会社P社(SaaS勤怠+請求+会計連携)の監査計画の組み立て
前提:P社は勤怠をスマホ打刻、拠点管理者が承認。請求は別SaaS、会計はクラウド会計。月末に勤怠データを締め、請求データを会計へ連携し、入金は銀行APIで自動取込、一部は手動消込。
このとき、監査計画の策定6としての「適合した監査計画」は、例えば次のように具体化します。
- 勤怠データの承認ログ、修正ログを入手し、例外処理(手修正)の母集団を作る
- 単価マスタの変更履歴(誰がいつ何を変えたか)を確認し、改定の多い派遣先を重点にする
- 勤怠→請求→会計の連携点で、データ項目のマッピングと欠落リスクを確認する
- 銀行取込と消込ルール(自動消込条件、手動消込の権限)を把握し、売掛金の残高の信頼性を評価する
こうした設計があると、監査証明の根拠が「数字」だけでなく「数字が生まれる仕組み」まで説明できるようになります。
5. 会話例:ITの話を「監査手続」に翻訳する(話者ごと改行)
監査人:今期は勤怠SaaSと請求SaaSの連携が強いので、監査計画の策定6として、システムの使われ方を前提に監査計画を組みます。監査証明の根拠として、ログと権限が重要になります。
経理部長:ログはありますが、正直そこまで見られると思っていませんでした。数字は合っています。
監査人:数字が合っていることと、合っていると言い切れる根拠は別です。監査証明では、勤怠の修正が誰でもできる状態だと説明が弱くなります。
経理部長:勤怠の修正は拠点責任者なら可能です。
監査人:その前提で、例外修正の母集団を作り、修正理由・承認状況・請求への反映まで追跡するサンプルを計画に入れます。単価マスタの変更履歴も同様に押さえます。
経理部長:システム更改も予定していますが、監査への影響は大きいですか。
監査人:大きいです。移行期間は連携が崩れやすいので、移行前後で突合範囲を増やし、期中から証拠を積み上げます。監査証明を期末の一発勝負にしないためです。
6. システム更改・運用変更がある年の注意点(人材派遣会社で起きやすい)
人材派遣会社は拠点追加・派遣先追加・勤怠方式変更(打刻アプリ変更等)が起きやすいです。こうした変化は、監査計画の策定8(計画修正)にもつながりますが、策定6の段階で「変化が起きたらどこが壊れるか」を見立てておくと、監査証明の品質が落ちにくくなります。
- 移行期間の二重運用(旧システムと新システム)
- マスタ移行(派遣先コード、単価、締め日)の欠落・重複
- 権限の再設定漏れ(退職者IDが残る等)
- 例外処理の増加(手入力が増える)
まとめ:監査計画の策定6は「IT前提で監査証明を成立させる設計図」
監査計画の策定6は、ITの存在を確認する話ではなく、ITの利用状況に合わせて、どの証拠を、どこから、どう積むかを計画段階で決めるための規律です。人材派遣会社では勤怠・単価・請求・入金がデータでつながるため、ログ、権限、例外処理、連携点を押さえた計画にすることが望まれます。
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- 労働者派遣事業許可に必要な監査や合意された手続に精通し、数多くの企業をサポートしてきました。日々の業務では「クライアントファースト」を何よりも大切にし、丁寧で誠実な対応を心がけています。監査や手続を受けなくても財産的基礎の要件をクリアできる場合には、そちらを優先してご提案するなど、常にお客様の利益を第一に考える良心的な姿勢が信条です。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
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