「もっぱら派遣」とは?禁止される理由と判断基準を解説

もっぱら派遣」という言葉を耳にしたことがありませんか? 派遣会社を運営する人や、派遣労働者として働く人にとって重要なルールなので、初心者の方でもわかりやすく説明していきます。知らずに違反すると大変なことになるので、ぜひ最後まで読んでください!

派遣事業は、企業の人手不足を解消し、労働者の柔軟な働き方を支える大事な仕組みですが、法律で厳しく規制されています。その一つが「もっぱら派遣」の禁止です。順を追って見ていきましょう。

「もっぱら派遣」とは何か? なぜ禁止されているの?

もっぱら派遣とは、派遣労働者の派遣先を特定の会社(例: 1社だけ)に限定する行為のことをいいます。これは労働者派遣法で明確に禁止されています。簡単に言うと、派遣会社が「この派遣労働者はA社にしか送らないよ」と決めてしまうような運営です。

なぜ禁止されているのか? その理由は、雇用市場の健全性を守るためです。もしもっぱら派遣を認めてしまうと、派遣労働者の派遣先が特定の会社に事実上限定されたり、派遣労働者にとっての選択幅が著しく限定されたりしてしまいます。例えば、親会社が子会社として派遣会社を設立し、親会社の都合にあわせて派遣労働者を子会社から供給させるようなケースです。これが可能になると、親会社は正社員を直接雇用する動機付けを失ってしまい、結果として雇用が不安定化したり、労働者の権利が損なわれたりする恐れがあります。派遣はあくまで多様な企業に労働力を提供することを前提としているので、もっぱら派遣はこうした悪用を防ぐために禁止されているんですよ。

もっぱら派遣と見なされる判断基準:3つのポイントと具体例

労働者派遣法では、もっぱら派遣かどうかを判断するための基準が定められています。厚生労働省のガイドラインに基づき、主に以下の3つです。これらに該当すると、禁止行為とみなされる可能性が高いです。各基準について、具体例を挙げて説明しますね。

  1. 定款、寄附行為、登記事項証明書に事業の目的がもっぱら派遣である旨が記載されている場合
    定款(ていかんと読みます。会社の一番基本となるルールブック)や登記事項証明書(会社の登記情報)で、「事業の目的が特定の会社への派遣に限定されている」と明記されている場合です。
    具体例: ある派遣会社が定款に「当社は親会社X社へのみ労働者を派遣する」と書いてあり、登記もそれに沿っている場合。これは明らかに特定の会社限定なので、もっぱら派遣と判断されます。初心者目線で言うと、会社の「目的欄」に特定の企業名が入っているとNGです。
  2. 派遣先の確保のための努力が客観的に認められない場合
    派遣会社が、新しい派遣先(企業)を開拓するための努力をしていない場合。営業活動や広告を一切せず、特定の会社だけに頼っている状態です。
    具体例: 派遣会社がウェブサイトや求人広告で「当社はA社グループのみの派遣です」と宣伝し、他の企業からの問い合わせを無視している場合。あるいは、営業担当者がおらず、1社だけの契約書しか持っていないような状況。客観的に見て「他の派遣先を探す気がない」とわかると、もっぱら派遣と見なされます。例えば、設立後1年経っても派遣先が1社しか増えていないのに、理由を説明できないケースです。
  3. 労働者派遣を受けようとする者からの依頼に関し、特定の者以外からのものについては正当な理由なくすべて拒否している場合
    他の企業から「派遣をお願いしたい」と依頼が来ても、正当な理由なく断り続け、特定の会社だけを受け入れる場合です。
    具体例: B社から「エンジニアを派遣してほしい」と依頼が来ても、「うちはC社専属なのでお断りします」と理由なく拒否し続ける場合。あるいは、複数の企業から問い合わせがあっても、すべて「人員不足」を口実に断り、実際には特定の1社にしか派遣していない状況。正当な理由(例: 専門スキルが合わない)がないのに拒否を繰り返すと、問題視されます。例えば、派遣会社の取引履歴を見ると、99%が1社だけというデータが出たらアウトです。

これらの基準は、派遣会社の運営実態を総合的に見て判断されます。厚生労働省の労働局が調査に入ることもあるので、注意が必要です。

もっぱら派遣と認められた場合の措置と例外

もしもっぱら派遣と認められた場合、厚生労働大臣(または労働局長)は、派遣元事業主に対して事業目的及び運営の方法を変更するよう勧告することができます。改善しないと、さらに厳しい処分が待っています。なぜなら、もっぱら派遣の禁止は派遣事業の許可要件の一つだからです。違反が認められると、許可取り消し処分事業停止命令を受けることになってしまいます。これにより、事業が続けられなくなる可能性大です。

ただし、例外があります。派遣元が雇用する派遣労働者のうち、60歳以上の者、かつ他の事業主の事業所から60歳以上の定年退職後に雇い入れた者が30%以上である場合は、適用除外となります。これは、高齢者の再就職を促進するための特例で、シニア層の雇用を積極的に支える派遣会社は対象外になるんです。例: 派遣労働者の半数が60歳以上のリタイア組で、特定の企業に限定して派遣している場合などです。

まとめ:もっぱら派遣を避けて健全な派遣ビジネスを!

もっぱら派遣は、派遣事業の「多様性」を損なう行為として禁止されており、判断基準をクリアしないと重大なペナルティが課せられます。派遣会社を運営するなら、複数の企業と取引し、積極的に派遣先を開拓しましょう。初心者の方は、事業開始前に労働局に相談したり、専門家にアドバイスをもらうのがおすすめです。労働者派遣法は労働者の保護を第一に考えているので、ルールを守って信頼されるビジネスを目指してください!

(この記事は一般的な情報提供を目的としており、法的アドバイスではありません。実際の事業運営時には、厚生労働省のガイドラインを熟読し専門家にご相談ください。)

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jinzaihaken
jinzaihaken
労働者派遣事業許可に必要な監査や合意された手続に精通し、数多くの企業をサポートしてきました。日々の業務では「クライアントファースト」を何よりも大切にし、丁寧で誠実な対応を心がけています。監査や手続を受けなくても財産的基礎の要件をクリアできる場合には、そちらを優先してご提案するなど、常にお客様の利益を第一に考える良心的な姿勢が信条です。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。