三井住友銀行のCMSサービスを利用していてグループ全体で資金効率を図っていた派遣会社社長の後悔
「まさか、うちが更新できないなんて...」
派遣会社を経営する田中社長(仮名)は、労働局の窓口で書類を返却された瞬間、言葉を失いました。創業15年、純資産は5,000万円を超え、負債はわずか。業績は右肩上がりで、派遣スタッフからの信頼も厚い。誰が見ても健全な優良企業です。
それなのに、労働者派遣事業許可の更新申請が受理されなかったのです。
理由は、たった一つの数字。決算日時点の預金残高が1,500万円に満たなかった――。
「実質的には十分な資金があったのに、なぜこんなことに...」
田中社長の後悔の声は、今も私の耳に残っています。
CMSという優れたシステムが招いた皮肉な結果
CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)の魅力
田中社長の会社は、グループ企業3社を統括する親会社でした。資金効率を高めるため、三井住友銀行のCMS(Cash Management Service)を導入していました。
CMSとは、グループ企業間の資金を一元管理し、資金効率を最大化するための仕組みです。
その仕組みはこうです:
- 資金に余裕がある子会社の預金を親会社が集約
- 集約した資金を資金が不足している子会社に融通
- グループ全体で外部借入を削減し、金利負担を軽減
- 遊休資金を最小化し、資金効率を最大化
田中社長の会社は、この仕組みを見事に活用していました。子会社A社には常に資金が余っており、子会社B社は事業拡大で資金需要が旺盛。親会社がCMSでバランスを取ることで、グループ全体として年間数百万円の金利を節約できていたのです。
「素晴らしいシステムだと思っていました。銀行の担当者も、『資金効率が格段に上がりますよ』と自信を持って勧めてくれましたから」
田中社長は当時を振り返り、苦笑いしました。
決算日に起きていたこと
しかし、決算日――3月31日。田中社長の会社の貸借対照表には、ある数字が記載されていました。
「関係会社貸付金:3,000万円」
これは、CMSを通じて子会社A社から親会社が吸い上げた資金でした。そして、その資金の一部は子会社B社に融通されていました。
ここで問題が発生します。
親会社の自己名義の預金残高は、わずか1,200万円だったのです。
「まさか、これが問題になるとは夢にも思いませんでした。貸付金も当社の資産ですし、回収しようと思えばすぐに回収できる。実質的には資金に余裕があるんです」
田中社長の言葉は、まさにその通りでした。しかし、労働者派遣事業許可の世界では、「実質」ではなく「形式」が問われるのです。
労働者派遣事業許可の冷徹なルール
財産的基礎要件という壁
労働者派遣事業許可を維持するには、以下の財産的基礎要件をすべて同時に満たさなければなりません。
- 基準資産額が2,000万円以上であること
- 基準資産額が負債総額の7分の1以上であること
- 自己名義の現金・預金額が1,500万円以上であること
田中社長の会社は、1と2の要件は余裕でクリアしていました。純資産は5,000万円を超え、負債は少ない。問題は、3番目の要件だけでした。
「貸付金」は「預金」ではない
貸借対照表上、子会社への貸付金は「貸付金」という勘定科目で計上されます。これは、財産的基礎要件における「自己名義の現金・預金」には該当しません。
つまり、いくら「実質的には資金がある」と主張しても、決算日時点の預金残高が1,500万円未満であれば、要件を満たさないのです。
「労働局の担当者に、『決算日前に貸付金を回収して預金に戻せば良かったんですが』と言われました。その時は、もう遅かったんです」
田中社長の声には、深い後悔がにじんでいました。
三井住友銀行CMSの特徴と派遣事業での活用
三井住友銀行CMSの優位性
田中社長が利用していた三井住友銀行のCMSは、実は業界でも高く評価されているサービスです。
1. フィンテック対応の先進性
三井住友銀行CMSは、API連携に積極的です。
- 会計ソフトとの直接連携: freee、マネーフォワード、弥生会計などと自動データ連携
- RPAツール対応: 定型業務の自動化が容易
- カスタマイズ性: 自社システムとのAPI連携が比較的簡単
「経理担当者から、『仕訳入力がほとんど自動化できて、業務時間が半分になった』と喜ばれていました」
2. 労働者派遣事業での具体的メリット
派遣事業において、三井住友銀行CMSは特に以下の点で威力を発揮します。
給与振込の効率化
- 大量振込の高速処理: 月末の給与振込ピーク時も安定稼働
- 複数口座への分割振込: 派遣スタッフの希望に応じた柔軟な対応(生活費口座と貯蓄口座への分割など)
「派遣スタッフが300名を超えても、給与振込は一瞬で完了。システムダウンの心配もありませんでした」
派遣先からの入金管理
- 複数派遣先からの入金を自動仕訳
- 取引先別の入金予定と実績の照合機能
- 入金消込作業の大幅効率化
キャッシュフロー予測
- 給与支払い(固定支出)と派遣料入金(変動収入)のタイミングギャップを可視化
- 資金繰り計画の精度向上
- グループ全体の資金状況をリアルタイムで把握
あの日、何が起きたのか――後悔の決算日
決算日3週間前
経理担当者が田中社長に報告しました。
「社長、今月末の決算ですが、預金残高が少し少ないです」
「どれくらい?」
「1,200万円ほどです。でも、子会社への貸付金が3,000万円ありますし、問題ないですよね?」
「そうだね。純資産も十分あるし、問題ないだろう」
この会話が、すべての始まりでした。
決算日
3月31日、決算日。田中社長の会社の貸借対照表には、次のように記載されました。
資産の部
- 現金及び預金:1,200万円
- 関係会社貸付金:3,000万円
- その他資産:4,800万円
- 資産合計:9,000万円
負債・純資産の部
- 負債合計:500万円
- 純資産合計:8,500万円
完璧な財務状況です。誰が見ても健全な会社です。
3ヶ月後――許可更新申請
田中社長は自信を持って労働局に更新申請書類を提出しました。
しかし、窓口担当者の表情が曇りました。
「申し訳ございません。こちらの決算書ですと、財産的基礎要件の3番目、現金・預金1,500万円以上の要件を満たしていません」
「え? でも、純資産は8,500万円もありますよ。貸付金を入れれば資金は十分です」
「貸付金は、自己名義の現金・預金には該当しません。決算日時点の預金残高が1,200万円では、要件を満たしません」
田中社長は、その場で凍りつきました。
絶望と後悔
「すぐに子会社から資金を回収できます。今なら預金は3,000万円以上になります」
「申し訳ございません。更新申請に使用するのは、直近の決算書です。決算日時点の数字で判断されます」
「そんな...CMSで資金効率を上げるのは、銀行も推奨していたことです。それが仇になるなんて...」
田中社長の声は震えていました。
三井住友銀行CMSと派遣事業許可――両立の道
CMSの素晴らしさと注意点
三井住友銀行のCMSは、本当に優れたサービスです。
- 資金効率の向上: グループ全体で年間数百万円の金利削減も可能
- 業務効率化: 経理業務のDX推進、作業時間の大幅削減
- 経営の可視化: リアルタイムでグループ全体の資金状況を把握
- ビジネス拡大: ビジネスマッチング機能で新規顧客開拓
しかし、労働者派遣事業許可を持つ企業は、決算日の預金残高に細心の注意を払う必要があります。
決算日前の資金調整が必須
更新前の決算においては、以下の対策が不可欠です:
- 決算日の3ヶ月前から預金残高をモニタリング
- 毎月の残高推移を確認
- 決算日の予測残高を計算
- 決算日前の資金調整
- CMSによる貸付を決算日前に一時的に回収
- 最低でも1,500万円、できれば2,000万円以上の預金を確保
- 決算日翌日に再度貸付を実行しても問題なし
- 三井住友銀行の担当者との連携
- 許可更新のスケジュールを銀行担当者に共有
- 決算日前の資金調整について事前相談
三井住友銀行CMSの強みを活かす
三井住友銀行CMSは、この対策も容易にします。
資金予測機能
- 将来の資金繰りを予測
- 決算日の預金残高を事前にシミュレーション
- アラート機能で預金不足を事前に警告
モバイルアプリでの即時対応
- 決算日前日でも、スマホから資金移動が可能
- 外出先からでも緊急対応できる
24時間365日のサポート体制
- 決算日近くの土日祝日でもヘルプデスク対応
- 専任担当者への相談が可能
「もし、決算日の3週間前に気づいていれば、スマホでポチッと資金を戻すだけで済んだんです。こんな簡単なことなのに...」
田中社長の後悔は、今も続いています。
他行CMSとの比較――三井住友銀行の優位性
某銀行CMSとの比較
| 項目 | 三井住友銀行CMS | 某銀行CMS |
|---|---|---|
| グループシナジー | 証券・カード・リース統合 | 総合金融グループだが連携は限定的 |
| API/フィンテック | 積極的に推進、対応が早い | 対応しているが保守的 |
| ビジネスマッチング | ビジネスeコミュニティあり | 類似機能なし |
| 外為統合 | 強力な外為機能統合 | 基本的な外為対応 |
| モバイルアプリ | UI/UX先進的 | 標準的 |
| 資金予測機能 | 高度なキャッシュフロー予測 | 基本的な予測機能 |
三井住友銀行CMSが特に適しているケース
派遣事業において、以下の企業に最適です
- SMBCグループとの既存取引が多い企業
- シナジー効果を最大化
- デジタル化・DXに積極的な企業
- API連携、RPA活用で経理業務を大幅効率化
- 海外取引がある派遣事業者
- 外資系企業への技術者派遣などで外貨決済が発生する場合
- ビジネス拡大志向の企業
- ビジネスマッチング機能を営業ツールとして活用
- 経理部門の効率化を重視
- 会計ソフト連携、全銀EDI活用で省力化
エピローグ:田中社長のその後と教訓
緊急対応と再申請
田中社長は、すぐに対策を講じました。
- 子会社からの貸付金を全額回収
- 預金残高を3,500万円に増加
- 次の決算期まで待機
- CMSは継続利用するが、決算日前には必ず資金調整
- 新しい決算書で再申請
- 無事に許可更新
「あの時は本当に焦りました。派遣スタッフたちに申し訳ない気持ちでいっぱいでした。もし許可が更新できなかったら、300人の雇用に影響が出るところでした」
田中社長からのメッセージ
現在、田中社長は三井住友銀行CMSを引き続き活用しています。ただし、決算日前の資金調整は徹底しています。
「三井住友銀行のCMSは本当に素晴らしいシステムです。これからも使い続けます。ただ、労働者派遣事業許可を持つ経営者の皆さんには、私と同じ失敗をしてほしくない。CMSで資金効率を上げるのは大賛成ですが、決算日の預金残高だけは絶対に確保してください」
田中社長の目は、真剣そのものでした。
まとめ――優れたツールを正しく使う知恵
三井住友銀行のCMSサービスは、企業規模やニーズに応じて選択できる、業界最高水準の資金管理ツールです。
その優位性は明確です
- SMBCグループ全体との強力なシナジー
- API連携によるフィンテック・DX推進
- ビジネスマッチング機能による営業支援
- 高度なキャッシュフロー予測とアラート機能
- 使いやすいモバイルアプリと24時間サポート
しかし、労働者派遣事業許可を保有する企業にとって、決算日時点での預金残高1,500万円以上という要件は、絶対に譲れないラインです。
実質的に資金に余裕があっても、決算日の貸借対照表で「預金」として計上されていなければ、要件を満たしません。これは、本当に気の毒ですが、ルール上は仕方がありません。
当事務所からのお願い
CMSを利用されている派遣事業者の皆様へ
労働者派遣事業許可の更新前の決算においては、預金の要件をクリアできる程度にCMSの利用を調整してください。三井住友銀行のCMSは、その調整も簡単にできる優れたシステムです。
- 決算日の3ヶ月前から預金残高を監視
- 決算日前に一時的に資金を戻す
- 決算日翌日に再度資金移動しても問題なし
この簡単な対策を忘れないでください。
事前の確認が、あなたの会社と派遣スタッフの未来を守ります。
【お問い合わせ】
労働者派遣事業許可更新に関する財産的基礎要件のご相談、合意された手続(AUP)のご依頼は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。
三井住友銀行CMSをはじめ、各種CMSサービスを利用されている企業様も、決算前の事前確認により、安心して許可更新を迎えることができます。
あなたの会社が、田中社長と同じ後悔をしないために――今すぐご相談ください。
※注: 三井住友銀行のCMSサービスの最新の機能詳細や料金については、三井住友銀行の営業担当または公式サイトでご確認ください。サービス内容は随時更新される可能性があります。
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投稿者プロフィール

- 労働者派遣事業許可に必要な監査や合意された手続に精通し、数多くの企業をサポートしてきました。日々の業務では「クライアントファースト」を何よりも大切にし、丁寧で誠実な対応を心がけています。監査や手続を受けなくても財産的基礎の要件をクリアできる場合には、そちらを優先してご提案するなど、常にお客様の利益を第一に考える良心的な姿勢が信条です。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
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