三菱UFJ銀行 資金財務効率化サービス(トレジャリーマネジメントサービス)を利用していてグループ全体で資金効率を図っていた会社の悲劇

労働者派遣事業の許可更新において、財産的基礎要件は必ずクリアしなければならない重要な要件です。しかし、グループ企業全体の資金効率を追求した結果、思わぬ落とし穴にはまってしまうケースがあります。今回は、三菱UFJ銀行の資金財務効率化サービス(トレジャリーマネジメントサービス)を利用していた会社が直面した、財産的基礎要件の問題についてご紹介します。

CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)とは

CMS(Cash Management System)とは、グループ企業間の資金を一元管理し、資金効率を最大化するための仕組みです。三菱UFJ銀行では「資金財務効率化サービス(トレジャリーマネジメントサービス)」という名称でこのサービスを提供しています。

CMSの仕組み

グループ企業を構成する複数の会社の中には、資金に余裕がある会社と資金が不足している会社が混在しています。CMSを活用すると、以下のような資金の流れが実現できます。

  1. 資金に余裕がある子会社から親会社が資金を吸い上げる
  2. 親会社がその資金を資金が不足している子会社に融通する
  3. グループ全体として資金効率が向上し、外部借入を削減できる

このような仕組みにより、グループ全体での金利負担の軽減や、資金の有効活用が可能になります。

実際に起きた悲劇のケース

会社の状況

ある労働者派遣事業許可を受けている会社様が、許可更新時に財産的基礎要件をクリアできずに困っていらっしゃいました。その会社様の財務状況は以下の通りでした。

  • 純資産: 十分に多く、健全な財務状態
  • 負債: ほとんどなく、極めて良好な財務内容
  • 資金繰り: 本来であれば資金に余裕がある優良企業

しかし、預金の要件だけが満たせないという問題に直面していました。

問題の原因

この会社様は、三菱UFJ銀行の資金財務効率化サービス(トレジャリーマネジメントサービス)を利用して、グループ全体の資金効率を図っていました。資金に余裕があったため、親会社に対して資金を貸し付けていたのです。

決算日における貸借対照表の状況は以下のようになっていました。

  • 親会社への貸付金が資産として計上
  • 自己名義の預金残高が1,500万円に満たない状態

労働者派遣事業の財産的基礎要件

労働者派遣事業許可の財産的基礎要件では、以下の条件を満たす必要があります。(事業所が1か所のみの場合)

  1. 基準資産額が2,000万円以上であること
  2. 基準資産額が負債総額の7分の1以上であること
  3. 自己名義の現金・預金額が1,500万円以上であること

この3つの要件をすべて同時に満たす必要があります。

なぜ要件を満たせなかったのか

貸借対照表上、親会社に貸し付けていた資金は「貸付金」として計上されます。この貸付金は、財産的基礎要件における「自己名義の現金・預金」には該当しません

つまり、実質的には資金に余裕があったにもかかわらず、決算日時点での預金残高が1,500万円を下回っていたため、要件を満たすことができなかったのです。

CMSを利用する企業への注意点

決算日を意識した資金管理

CMSは資金効率の観点からは非常に有効なサービスですが、労働者派遣事業許可の更新を控えている企業にとっては、慎重な対応が必要です。

更新前の決算においては、以下の点に注意してください。

  1. 決算日時点で自己名義の預金が最低1,500万円以上残るようにする
  2. CMSによる貸付を決算日前に一時的に回収する、または貸付額を調整する
  3. 決算日のタイミングを考慮した資金移動を計画する

事前の確認と計画

労働者派遣事業の許可更新は、許可有効期間満了日の3ヶ月前から2ヶ月前までに申請する必要があります。更新申請に使用する決算書は、通常、直近の事業年度のものです。

したがって、決算期を迎える前に以下の確認を行うことをお勧めします。

  • 現在のCMS利用状況の把握
  • 決算日における預金残高の予測
  • 必要に応じて、決算日時点での資金配置の調整

合意された手続(AUP)の活用

当事務所では、労働者派遣事業許可更新のための合意された手続を提供しております。決算後の月次決算で財産的基礎要件を満たしたうえで、合意された手続を受けることで更新申請が可能になります。

もっとも、決算期前であれば、資金配置の調整など、対策を講じる時間的余裕がありますから、計画的なCMS利用がベストであることは言うまでもありません。

まとめ

三菱UFJ銀行の資金財務効率化サービス(トレジャリーマネジメントサービス)をはじめとするCMSは、グループ企業の資金効率を高める優れたツールです。しかし、労働者派遣事業許可を保有する企業にとっては、決算日時点での預金残高が許可要件に直結する重要な要素となります。

実質的に資金に余裕があっても、決算日における貸借対照表の表示方法によっては要件を満たせないという、本当に気の毒なケースが実際に発生しています。しかし、ルール上は仕方がありません

CMSを利用されている企業様は、労働者派遣事業許可の更新前の決算において、預金の要件をクリアできる程度にCMSの利用を調整していただくことを強くお勧めいたします。

当事務所では、労働者派遣事業許可更新のための合意された手続(AUP)を通じて、このような問題の早期発見と対策のご支援をさせていただいております。お気軽にご相談ください。


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投稿者プロフィール

jinzaihaken
jinzaihaken
労働者派遣事業許可に必要な監査や合意された手続に精通し、数多くの企業をサポートしてきました。日々の業務では「クライアントファースト」を何よりも大切にし、丁寧で誠実な対応を心がけています。監査や手続を受けなくても財産的基礎の要件をクリアできる場合には、そちらを優先してご提案するなど、常にお客様の利益を第一に考える良心的な姿勢が信条です。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。