労働者派遣契約とは? 基本契約と個別契約を徹底解説
派遣事業者様が「労働者派遣契約の適切な締結方法」について悩んでいらっしゃるのを目にしています。派遣契約は派遣事業の根幹をなす重要な法律文書であり、トラブル発生時の拠り所となるものです。本記事では、初めて派遣事業に携わる方でも理解できるよう、労働者派遣契約の全体像を具体例を交えながら分かりやすく解説します。
労働者派遣契約とは? 基本的な仕組みを理解する
労働者派遣事業を行うにあたっては、まず派遣元が派遣先に対して労働者を派遣し、派遣先が受け入れた労働者を指揮命令下において業務に従事させ、その対価として料金を派遣元に支払うという契約を締結することになります。これを労働者派遣契約と言います。
三者間の関係を理解する
労働者派遣には三者が関わります:
- 派遣元企業(派遣会社):労働者と雇用契約を結ぶ、給与を支払う
- 派遣先企業:労働者に指揮命令を行い業務に従事させる、派遣料金を支払う
- 派遣労働者:派遣元に雇用され、派遣先で働く
具体例:IT企業への派遣ケース
【派遣元】A人材派遣会社
↓ 雇用契約・給与支払い
【派遣労働者】システムエンジニアのCさん
↓ 指揮命令関係
【派遣先】Bソフトウェア開発会社
↓ 派遣料金支払い
【派遣元】A人材派遣会社
この場合、Cさんの雇用主はA社のままですが、実際の業務指示はB社が行います。A社とB社の間で労働者派遣契約を締結することになります。
なぜ労働者派遣契約が重要なのか?
派遣業務ではトラブルが起こるリスクがつきものです。労働者派遣契約は、こうした問題解決の拠り所となる大切な約束事なのです。
派遣現場でよくあるトラブル事例
トラブル1:業務内容の相違
- 契約では「一般事務」だったのに、実際は営業活動やクレーム対応を求められた
- 専門的なスキルが必要な業務を、契約外で依頼されてしまった
- 「派遣契約書に記載されていない業務は対応できません」と明確に示せる
トラブル2:派遣料金をめぐる問題
- 時間外労働が月30時間発生したが、追加料金の計算方法について認識が異なる
- 契約期間の中途解約に伴う費用負担について、派遣先と派遣元で見解が分かれた
- 契約書に明記された料金体系があれば、迅速に解決できる
トラブル3:安全管理責任の所在
- 派遣先での作業中に派遣労働者が怪我をした際、責任の所在が不明確
- 健康診断の実施義務について、派遣元・派遣先のどちらが負担するのか認識のずれがある
- 契約書で責任分担を明確にしておけば、迅速な対応が可能
明確な労働者派遣契約があれば、こうしたトラブルが発生しても、契約内容に基づいて迅速かつ公正に解決できます。
基本契約と個別契約からなる2層構造の契約体系
労働者派遣契約は、基本契約と個別契約に大別されます。基本契約を締結した上で、派遣案件が発生する都度、個別契約を締結することが一般的です。
契約締結の実務フロー
【初回取引時】
派遣元 ⇔ 派遣先:基本契約を締結
↓ (年間の取引ルール、派遣料金の枠組み、損害賠償などを定める)
【派遣案件発生ごと】
派遣元 ⇔ 派遣先:個別契約を締結
↓ (具体的な業務内容、派遣期間、就業場所などを定める)
【派遣開始】
派遣労働者が派遣先で就業開始
この2層構造により、基本契約で大枠を定め、個別契約で具体的な条件を柔軟に設定できるようになっています。
労働者派遣基本契約書とは? 盛り込むべき内容
基本契約の位置づけと特徴
労働者派遣法第26条の規定によって記載が義務付けられている事項については、労働者を派遣する都度交わす個別契約に記載することになります。したがって、基本契約書については、それ以外の事項について定めることになります。
例えば、派遣労働者の交代要望についてや、債務不履行となった場合の損害賠償責任などがそれにあたります。
基本契約の作成主体と注意点
基本契約の内容は、派遣元と派遣先が自由に決めることができます。一般的には派遣元が主導で作成し、派遣先に提示されているようにお見受けします。そのため、派遣元の都合が優先されて作られる傾向にあるように思います。
派遣先の立場から重要な確認ポイント
派遣労働者を受け入れる派遣先としては、面倒でも各条項をしっかりと確認し、認められない事項については派遣元と協議する必要があります。
具体例:派遣先がチェックすべき基本契約の重要条項
1. 損害賠償条項のチェック
【要注意な記載例】
「派遣先の都合による契約解除の場合、残期間の派遣料金全額を支払う」
【確認すべき点】
→ やむを得ない事業上の理由での解約時の負担が過大ではないか?
→ 妥当な予告期間(30日前など)を設ければ免除される条項はないか?
→ 予告期間なしの場合の損害賠償額は合理的な範囲か?
2. 料金改定条項のチェック
【要注意な記載例】
「派遣元は派遣先への事前通知により料金を一方的に変更できる」
【確認すべき点】
→ 一方的な値上げを認める内容になっていないか?
→ 料金改定時には必ず協議する条項が入っているか?
→ 改定の頻度や上限に制限はあるか?
基本契約に一般的に記載される主な事項
基本契約の内容は派遣元と派遣先が自由に決めることができますが、一般的に結ばれる主な契約内容は次のような事項です。
1. 契約の目的
労働者派遣を行う際の根拠となる契約であり、契約の目的が労働者派遣の実施にあることを明記します。
記載例:
第○条(目的)
本契約は、乙(派遣元)が、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下「労働者派遣法」という。)及び本契約に基づき、乙の雇用する労働者(以下「派遣労働者」という。)を甲(派遣先)に派遣し、甲が派遣労働者を指揮命令下において業務に従事させ、その対価として料金を乙に支払うことについて、必要な事項を定めることを目的とする。
2. 個別の派遣契約への委任事項と適用範囲
基本契約と個別契約の関係性を明確化し、個別契約で定めるべき事項を列挙します。
記載例:
第○条(個別契約)
1. 甲及び乙は、労働者派遣を実施する都度、労働者派遣法第26条に定める事項を記載した個別の労働者派遣契約(以下「個別契約」という。)を締結するものとする。
2. 本基本契約に定める事項は、すべての個別契約に適用されるものとする。
3. 本基本契約の規定と個別契約の規定が矛盾抵触する場合は、個別契約の規定が優先するものとする。
3. 派遣料金の決定、計算、支払いに関する事項
派遣料金の計算方法、支払条件、支払期限などを定めます。
記載例:
第○条(派遣料金)
1. 甲は、労働者派遣の対価として、乙に対し、個別契約で定める派遣料金を支払うものとする。
2. 派遣料金は、以下の方法により計算する。
(1)通常就業時間:時間単価×実働時間数
(2)時間外労働:時間単価×1.25×時間外労働時間数
(3)休日労働:時間単価×1.35×休日労働時間数
(4)深夜労働:時間単価×1.25×深夜労働時間数
3. 乙は、毎月末日締めで派遣料金を計算し、翌月10日までに甲に請求書を送付する。
4. 甲は、請求書受領後、当月末日までに乙の指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。なお、振込手数料は甲の負担とする。
4. 派遣就業に伴う必要経費の負担に関する事項
交通費、宿泊費、資格取得費用などの経費負担について定めます。
記載例:
第○条(経費の負担)
1. 派遣労働者の通勤に要する交通費は、乙が負担するものとする。ただし、個別契約で別段の定めをした場合は、この限りでない。
2. 派遣業務の遂行に必要な資格取得費用、制服代、その他甲の指示により派遣労働者が負担した費用については、甲乙協議の上、その負担を決定するものとする。
5. 派遣元の遵守事項及び努力義務
派遣元が守るべき事項や責任を明記します。
記載例:
第○条(派遣元の遵守事項)
1. 乙は甲に対して、個別契約で定める業務を遂行するために必要な能力、技術、知識、資格、技能、経験等を有する適正な派遣労働者を派遣しなければならない。
2. 乙は、派遣労働者に対し、労働基準法、労働安全衛生法その他労働関係法令を遵守し、適正な労務管理を行わなければならない。
3. 乙は、派遣労働者に対し、派遣就業開始前に必要な教育訓練及び安全衛生教育を実施しなければならない。
4. 乙は、派遣元責任者を選任し、その氏名を甲に通知しなければならない。
6. 派遣先の遵守事項及び努力義務
派遣先が守るべき事項や責任を明記します。
記載例:
第○条(派遣先の遵守事項)
1. 甲は、派遣労働者に対し、個別契約で定める業務の範囲内で指揮命令を行うものとし、契約外の業務に従事させてはならない。
2. 甲は、労働者派遣法その他関係法令を遵守し、派遣労働者の適正な就業環境の確保に努めなければならない。
3. 甲は、派遣先責任者を選任し、その氏名を乙に通知しなければならない。
4. 甲は、派遣労働者に対して、自社の労働者と同様に、安全衛生に関する措置を講じなければならない。
7. 契約当事者の一方に契約違反があった場合の損害賠償責任
契約違反時の損害賠償の範囲と手続きを定めます。
記載例:
第○条(損害賠償)
1. 甲又は乙が、本契約又は個別契約に違反し、相手方に損害を与えた場合は、相手方に対して、その損害を賠償しなければならない。
2. 甲が、甲の責に帰すべき事由により個別契約を中途解約する場合は、少なくとも30日前までに乙に書面で通知しなければならない。通知期間が30日に満たない場合は、不足日数分の派遣料金相当額を乙に支払わなければならない。
3. 前項の場合において、甲は乙が派遣労働者を休業させることにより生じた損害(休業手当相当額)を賠償しなければならない。
8. 派遣元責任者と派遣先責任者に関する事項
両責任者の選任義務と役割を定めます。
記載例:
第○条(派遣元責任者及び派遣先責任者)
1. 乙は、労働者派遣法第36条に基づき、派遣元責任者を選任し、その氏名及び連絡先を甲に通知するものとする。
2. 甲は、労働者派遣法第41条に基づき、派遣先責任者を選任し、その氏名及び連絡先を乙に通知するものとする。
3. 派遣元責任者及び派遣先責任者は、相互に連携し、派遣労働者の適正な就業の確保、苦情の処理等に当たるものとする。
9. 派遣労働者の遵守事項
派遣労働者が守るべきルールを定めます。
記載例:
第○条(派遣労働者の遵守事項)
乙は、派遣労働者に対し、次の事項を遵守させるものとする。
(1)甲の就業規則その他の規程を遵守すること
(2)甲の指揮命令者の指示に従い、誠実に業務を遂行すること
(3)甲の秘密情報を第三者に漏洩しないこと
(4)甲の施設、設備、機器等を善良な管理者の注意をもって使用すること
10. 派遣労働者の休暇取得と代替者派遣に関する原則的な取扱い
派遣労働者が休暇を取得する際の代替要員の手配について定めます。
記載例:
第○条(休暇取得と代替者派遣)
1. 派遣労働者が年次有給休暇その他の休暇を取得する場合、乙は事前に甲に通知するものとする。
2. 前項の場合において、甲が代替要員の派遣を希望するときは、乙は実務上合理的な範囲で速やかに代替要員を派遣するよう努めるものとする。ただし、乙は代替要員の派遣を保証するものではない。
3. 派遣労働者が疾病その他やむを得ない事由により就業できなくなった場合も、前項と同様とする。
11. 派遣労働者交代に関する原則的な取扱い
派遣労働者の交代が必要となった場合の手続きを定めます。
記載例:
第○条(派遣労働者の交代)
1. 甲は、派遣労働者が個別契約で定める業務を遂行するために必要な能力等を欠いていると合理的に認めたときは、乙に対して派遣労働者の交代を求めることができる。
2. 乙は、前項の求めがあった場合、速やかに甲と協議の上、代替要員を派遣するものとする。
3. 派遣労働者の交代に要する費用は、原則として乙の負担とする。ただし、甲の責に帰すべき事由による場合は、甲乙協議の上決定するものとする。
12. 基本契約の解除及び個別の派遣契約の解除に関する事項
契約解除の要件と手続きを定めます。
記載例:
第○条(契約の解除)
1. 甲又は乙は、相手方が次の各号のいずれかに該当した場合には、何らの催告を要せず、直ちに本契約及び個別契約を解除することができる。
(1)本契約又は個別契約に違反し、相当期間を定めた催告後も是正されない場合
(2)手形又は小切手が不渡りとなった場合
(3)破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始の申立てがあった場合
(4)重大な法令違反があった場合
2. 前項により契約を解除した場合でも、相手方に対する損害賠償請求権は妨げられないものとする。
13. 基本契約の有効期間及び契約更新に関する事項
契約の期間と更新手続きを定めます。
記載例:
第○条(有効期間)
1. 本契約の有効期間は、令和○年○月○日から令和○年○月○日までの1年間とする。
2. 本契約は、期間満了の3ヶ月前までに甲又は乙のいずれからも書面による更新拒絶の通知がない限り、同一条件でさらに1年間自動的に更新されるものとし、以後も同様とする。
3. 本契約が更新される場合でも、個別契約の有効期間は各個別契約で定める期間とする。
14. その他(秘密保持、個人情報保護、合意管轄など)
秘密保持条項の例:
第○条(秘密保持)
1. 甲及び乙は、本契約及び個別契約の履行に関して知り得た相手方の秘密情報を、相手方の事前の書面による承諾なしに第三者に開示又は漏洩してはならない。
2. 前項の秘密保持義務は、本契約終了後も3年間継続するものとする。
個人情報保護条項の例:
第○条(個人情報の保護)
1. 甲及び乙は、本契約及び個別契約の履行に関して取得した個人情報を、個人情報の保護に関する法律その他関係法令を遵守して適切に取り扱わなければならない。
2. 甲及び乙は、取得した個人情報を、本契約及び個別契約の履行以外の目的に使用してはならない。
労働者派遣個別契約書とは? 法定記載事項はこんな感じ
個別契約に織り込むべき契約内容
労働者派遣契約の個別契約の内容は、労働者派遣法第26条及び厚生労働省令によって規定されており、労働者派遣の実施及び派遣労働者の就業条件に係る次の事項を定める必要があります。その際、派遣労働者の人数についても記載することになります。
法定記載事項の詳細解説
1. 派遣労働者が従事する業務の内容
具体的かつ詳細に記載する必要があります。
NG例(抽象的)
「一般事務」
「営業補助」
OK例(具体的)
「経理部門における以下の業務:
・会計ソフト(○○システム)への伝票入力
・売上データ集計及びExcelでの報告書作成
・請求書発行及び入金確認
・月次決算補助業務(試算表作成まで)」
製造業の例:
「○○○機器部品の治工具を使用した組立、簡易検査装置を使用した検査、材料の運搬・投入、端末を使用したデータ入力及び書類作成並びにそれらに付随する業務」
2. 派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度
従事する業務に伴って行使するものとして付与されている権限の範囲・程度等を記載します。
記載例:
「副リーダー(部下2名、リーダー不在時の緊急対応が週1回程度あり)」
「担当者レベル(上司の指示に基づき定型業務を遂行、特別な権限なし)」
「係長職(部下5名の業務配分と進捗管理、月次報告書の承認権限あり)」
役職を有する派遣労働者であればその具体的な役職を、役職を有さない派遣労働者であればその旨を記載することで足りますが、派遣元事業主と派遣先との間で、派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度について共通認識を持つことができるよう、より具体的に記載することが望ましいです。
3. 派遣労働者が労働に従事する事業所の名称及び所在地その他派遣就業の場所並びに組織単位
組織単位の記載が重要です。個人単位の期間制限を管理するために必要となります。
記載例:
【派遣先事業所】
〒100-0001 東京都千代田区大手町1-1-1
株式会社○○ヒューマン興業 本社
TEL:03-xxxx-xxxx
【派遣就業場所】
上記本社ビル65階
【組織単位】
営業本部 第八営業部 ヒューマン営業課
(組織の長の職名:営業課長)
組織単位とは、派遣先の「課」や「グループ」など、業務としての類似性や関連性がある組織であり、かつその組織の長が業務の配分や労務管理上の指揮監督権限を有するものを指します。
4. 派遣労働者を直接指揮命令する者
実際に日々の業務指示を出す責任者を明記します。
記載例:
【指揮命令者】
営業課 課長代理 山田太郎
TEL:03-xxxx-xxxx(内線12345)
Email:yamadatarouda@humankougyou****.com
5. 労働者派遣の期間、就業日
派遣期間と就業する曜日を明記します。
記載例:
【派遣期間】
令和6年4月1日 ~ 令和7年3月31日(1年間)
【就業日】
月曜日~金曜日(祝日及び会社カレンダーに定める休日を除く)
【休日】
土曜日、日曜日、祝日、年末年始(12月29日~1月3日)、夏季休業(8月14日~16日)
6. 派遣就業の開始及び終了の時刻並びに休憩時間
記載例:
【就業時間】
9:00 ~ 18:00(実働8時間)
【休憩時間】
12:00 ~ 13:00(60分)
【時間外労働】
有(1日3時間、1ヶ月30時間、1年360時間の範囲内)
【休日労働】
有(1ヶ月2日以内)
7. 安全及び衛生に関する事項
派遣先と派遣元の安全衛生に関する責任分担を明記します。
記載例:
1. 派遣先及び派遣元事業主は、労働者派遣法第44条から第47条の4までの規定により課された各法令を遵守し、自己に課された法令上の責任を負う。
2. 派遣就業中の安全及び衛生については、派遣先の安全衛生に関する規定を適用することとし、その他については、派遣元事業主の安全衛生に関する規定を適用する。
3. 派遣先は、以下の安全衛生教育を実施する
・作業開始前の安全衛生教育
・機械設備の取扱いに関する教育
・危険物の取扱いに関する教育
4. 派遣先は、定期健康診断の結果を派遣元に通知する。
業務内容により具体的な事項を定め記載する必要があります。
8. 苦情処理に関する事項
派遣労働者から苦情があった場合の窓口と処理方法を明記します。
記載例:
【派遣先苦情受付担当】
人事部 総務課長 鈴木門次郎
TEL:03-xxxx-xxxx
Email:suzuki@humankougyou****.com
【派遣元苦情受付担当】
営業部 派遣元責任者 佐藤桜花子
TEL:03-yyyy-yyyy
Email:sato@human-haken-company.com
【苦情処理方法・連携体制】
1. 派遣先が苦情の申出を受けたときは、ただちに派遣元の派遣元責任者へ連絡し、連携して適切かつ迅速な処理を図ることとし、その結果を必ず派遣労働者に通知することとする。
2. 派遣元が苦情の申出を受けたときは、ただちに派遣先の派遣先責任者へ連絡し、連携して適切かつ迅速な処理を図ることとし、その結果を必ず派遣労働者に通知することとする。
3. 派遣先及び派遣元は、自らでその解決が容易であり、即時に処理した苦情についても、相互に遅滞なく通知するとともに、密接に連絡調整を行いつつ、その解決を図ることとする。
9. 労働者派遣契約解除に当たって講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置に関する事項
中途解約時の派遣労働者保護措置を明記します。
記載例:
【労働者派遣契約の解除に当たって講ずる措置】
1. 労働者派遣契約の解除の事前の申入れ
派遣先は、専ら派遣先に起因する事由により、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に解除を行おうとする場合には、派遣元の合意を得ることはもとより、あらかじめ相当の猶予期間(少なくとも30日前)をもって派遣元に解除の申入れを行うこととする。
2. 就業機会の確保
派遣先及び派遣元は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に派遣労働者の責に帰すべき事由によらない労働者派遣契約の解除を行った場合には、派遣先の関連会社での就業をあっせんする等により、当該労働者派遣契約に係る派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることとする。
3. 損害賠償等に係る適切な措置
派遣先は、派遣先の責に帰すべき事由により労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行おうとする場合には、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図ることとし、これができないときには、少なくとも当該労働者派遣契約の解除に伴い派遣元が当該労働者派遣に係る派遣労働者を休業させること等を余儀なくされたことにより生じた損害の賠償を行わなければならないこととする。
例えば、派遣元が当該派遣労働者を休業させる場合は休業手当に相当する額以上の額について、派遣元がやむを得ない事由により当該派遣労働者を解雇する場合は、派遣先による解除の申入れが相当の猶予期間をもって行われなかったことにより派遣元が解雇の予告をしないときは30日分以上、当該予告をした日から解雇の日までの期間が30日に満たないときは当該解雇の日の30日前の日から当該予告の日までの日数分以上の賃金に相当する額以上の額について、損害の賠償を行わなければならないこととする。
4. 労働者派遣契約の解除の理由の明示
派遣先は、労働者派遣契約の契約期間が満了する前に労働者派遣契約の解除を行おうとする場合であって、派遣元から請求があったときは、労働者派遣契約の解除を行った理由を派遣元に対し明らかにすることとする。
10. 紹介予定派遣の場合は、紹介予定派遣に関する事項
紹介予定派遣の場合に追加で記載する事項です。
記載例:
【紹介予定派遣に関する事項】
1. 派遣先が雇用する場合に予定される労働条件等
契約期間:期間の定め 無
業務内容:○○○機器部品の組立、検査、データ入力業務
試用期間:有(3ヶ月・条件同一)
就業場所:〒xxx-xxxx 新潟県新潟市○○町1丁目2番3号
始業・就業時刻:8:30~17:00
休憩時間:12:00~13:00(60分)
所定時間外労働:有(1日3時間、1ヶ月30時間、1年360時間の範囲内)
休日:毎週土・日、祝日、年末年始、夏季休業
休暇:年次有給休暇10日(6ヶ月継続勤務後)、慶弔休暇
賃金:月給180,000~240,000円(毎月15日締切、当月20日支払)
通勤手当:実費相当(上限月額12,000円)
割増賃金率:所定時間外25%、休日35%、深夜25%
昇給:有(0~3,000円/月)
賞与:有(年2回、計1ヶ月分)
社会保険:厚生年金、健康保険、雇用保険、労災保険 加入
雇用予定者:株式会社○○産業 ○○事業所
2. その他
・派遣先は、職業紹介を受けることを希望しなかった又は職業紹介を受けた者を雇用しなかった場合には、その理由を、派遣元事業主に対して書面により明示する。
・紹介予定派遣を経て派遣先が雇用する場合には、年次有給休暇及び退職金の取扱いについて、労働者派遣の期間を勤務期間に算入する。
11. 派遣元責任者及び派遣先責任者に関する事項
各責任者の氏名と連絡先を明記します。
記載例:
【派遣先責任者】
人事部 総務課 課長 田中浩一郎
TEL:03-xxxx-xxxx
【派遣元責任者】
営業部 派遣元責任者 山本博之
TEL:03-yyyy-yyyy
製造業務の場合は、製造業務専門派遣元・派遣先責任者を選任する必要があります。
12. 休日労働または時間外労働をさせる場合は、休日労働させる時間または時間外労働時間数
時間外労働や休日労働の上限を明記します。
記載例:
【時間外労働】
有(1日3時間、1ヶ月30時間、1年360時間の範囲内)
【休日労働】
有(1ヶ月2日以内)
「無」の場合は、その旨を明記します。
13. 派遣労働者の福祉の増進のための便宜の供与に関する事項
派遣先が派遣労働者に利用させる福利厚生施設を記載します。
記載例:
派遣先は、派遣先が雇用する労働者に対して利用の機会を与える以下の施設・サービスについて、派遣労働者に対しても利用の機会を提供する
・社員食堂の利用
・休憩室の利用
・更衣室・ロッカーの利用
・レクリエーション施設(保養所、運動施設)の利用
・制服の貸与
重要な注意点: 労働者派遣法第40条第3項により、派遣労働者に対しても利用の機会を与えなければならないとされている給食施設・休憩室・更衣室以外について記載することが求められています。
14. 派遣先が派遣終了後に派遣労働者を雇用する場合に、その雇用意思を事前に派遣元に対し通知することその他派遣終了後に労働者派遣契約当事者間の紛争を防止するために講ずる措置
有料職業紹介事業の許可がある場合の例:
労働者派遣の役務の提供の終了後、当該派遣労働者を派遣先が雇用する場合には、職業紹介を経由して行うこととし、手数料として派遣先は派遣元事業主に対して、支払われた賃金額の20分の1に相当する額を支払うものとする。ただし、引き続き6ヶ月を超えて雇用された場合にあっては、6ヶ月間の雇用に係る賃金として支払われた賃金額の10分の1に相当する額とする。
有料職業紹介事業の許可がない場合の例:
労働者派遣の役務の提供の終了後、当該派遣労働者を派遣先が雇用する場合には、あらかじめ相当の猶予期間(少なくとも30日前)をもって派遣元事業主に申し出ること。
15. 協定対象派遣労働者に限定するか否か
労使協定方式を採用する場合に記載します。
記載例:
「労使協定方式の対象となる派遣労働者に限定する」
または
「労使協定方式の対象となる派遣労働者に限定しない」
いずれかを記載します。
16. 派遣労働者を無期雇用に限定するか否か、60歳以上の者に限定するか否か
期間制限の適用除外に関する記載です。
記載例:
「無期雇用労働者に限定する」
「60歳以上の者に限定する」
「無期雇用労働者又は60歳以上の者に限定する」
「無期雇用労働者又は60歳以上の者に限定しない」
いずれかを記載します。
重要な注意点:
- 無期雇用派遣労働者:派遣元と期間の定めのない雇用契約を締結している労働者は、個人単位の期間制限(3年ルール)の対象外となります。
- 60歳以上の派遣労働者:就業開始日または就業開始日から3年が経過した時点で60歳以上の派遣労働者は、個人単位の期間制限の対象外となります。
これらに限定する場合は、事業所単位の派遣可能期間の制限に抵触する日の通知は不要となります。
17. 派遣可能期間の制限を受けない業務に係る労働者派遣に関する事項
以下に該当する場合に記載します:
記載例:
以下、該当する場合に記載すること:
・有期プロジェクトの業務に該当
・日数限定業務に該当
1ヶ月に行われる日数○日、派遣先の通常の労働者の月間所定労働日数◎日
・育児休業代替要員に該当
休業する労働者の氏名:○○○○
業務:(具体的業務内容)
休業予定日:令和○年○月○日 ~ 令和○年○月○日
・介護休業代替要員に該当
休業する労働者の氏名:○○○○
業務:(具体的業務内容)
休業予定日:令和○年○月○日 ~ 令和○年○月○日
これらの業務は、事業所単位・個人単位の期間制限の適用除外となります。
その他重要な記載事項
法定記載事項以外にも、実務上記載すべき事項があります。
派遣料金の額
記載例:
【派遣料金】
時間単価:3,500円(税別)
残業割増(法定内):3,500円
残業割増(法定外):4,375円(25%割増)
深夜割増:4,375円(25%割増)
休日労働割増:4,725円(35%割増)
または
月額:280,000円(1ヶ月当たり、所定労働時間160時間の場合)
派遣労働者の人数
記載例:
【派遣人員】
4名
派遣可能期間の制限に抵触する日
記載例:
【派遣可能期間の制限に抵触する日】
令和9年4月1日
※平成27年9月30日以降派遣を初めて受け入れた日、もしくは期間延長した日から3年と1日後の日付
※無期雇用派遣労働者もしくは60歳以上の者のみを対象とした場合には記載不要
2021年からの重要な変更:電子契約が可能に
これまでの書面作成の負担
これまで個別契約は書面に作成することとされていましたが、書面保存の負担が大きいことが課題でした。
従来の問題点
- 契約書の印刷・製本コスト
- 押印のための出社(テレワーク時代に不便)
- 郵送の手間と時間(契約締結まで数日かかる)
- 大量の契約書の保管スペース確保
- 過去の契約書の検索の困難さ
- 契約書の紛失リスク
2021年1月以降:電磁的記録での作成が可能に
2021年1月以降、電磁的記録により作成することも認められています。これにより、メールやクラウドシステムでの契約締結が可能になりました。
電子契約のメリット
- ✓ 即日での契約締結が可能(緊急の派遣案件に対応)
- ✓ 印紙税が不要(コスト削減)
- ✓ 保管場所が不要(クラウドで管理)
- ✓ 検索が容易(条件指定で瞬時に検索)
- ✓ テレワーク環境でも対応可能
- ✓ 契約書の紛失リスクがない
- ✓ 改ざん防止機能(電子署名)
電子契約の実務フロー:
1. 派遣元が個別契約書をPDFで作成
2. 電子契約システム(クラウドサインなど)にアップロード
3. 派遣先担当者にメールで通知
4. 派遣先がシステム上で内容確認・電子署名
5. 双方のシステムに自動保存(タイムスタンプ付与)
6. 検索・参照がいつでも可能
注意点
- 派遣先の承諾が必要(一方的に電子化はできない)
- 電子署名法に準拠したシステムの利用が望ましい
- データのバックアップ体制を整備する
- 3年間の保管義務は電子データでも同様
労働者派遣契約締結時の実務フロー
新規派遣先との契約フロー(初回取引)
ステップ1:基本契約の交渉・締結
【2週間前】
派遣元:基本契約書(案)を作成し、派遣先に送付
【1週間前】
派遣先:内容を精査し、修正要望を派遣元に提示
派遣元:修正案を作成
【3日前】
派遣元・派遣先:修正内容について協議・合意
【前日】
基本契約を締結(電子契約または書面)
ステップ2:個別案件の発生と職場見学
派遣先から派遣依頼
↓
派遣元が候補者を選定
↓
派遣先が職場見学を実施(※特定目的行為に該当しない範囲で)
↓
派遣決定
ステップ3:個別契約の締結
【派遣開始3日前】
派遣元:個別契約書を作成・送付(電子契約の場合は即日可)
派遣元:事業所抵触日通知書を送付
【派遣開始前日】
派遣先:内容確認・署名(電子署名)
【派遣開始当日】
契約に基づき派遣開始
派遣先:派遣先管理台帳の作成開始
派遣元:派遣元管理台帳の作成開始
既存派遣先での追加派遣のフロー
基本契約が既に締結されている場合は、個別契約のみの締結となるため、よりスムーズです。
簡素化されたフロー:
【5日前】
派遣依頼
↓
【3日前】
候補者選定・職場見学
↓
【前日】
個別契約締結(電子契約なら即日可)
事業所抵触日通知(初回派遣時のみ)
↓
【当日】
派遣開始
よくあるミスと対策(契約書作成時に気を付けるポイント)
ミス1:業務内容が抽象的で曖昧
NG例:
「一般事務」
「営業補助」
「製造業務」
OK例:
「営業部における以下の業務:
・見積書作成(専用システム使用)
・受発注データ入力(SAP使用)
・電話応対(取引先からの問い合わせ対応)
・来客対応(会議室への案内、お茶出し)
・書類ファイリング(契約書、請求書等)」
対策: 派遣労働者が実際に何をするのかが具体的にイメージできる記載にする。使用するシステムやツールも明記する。
ミス2:組織単位が不明確
NG例:
「本社」
「工場」
「営業部門」
OK例:
「本社 営業本部 第一営業部 営業課」
「○○工場 製造部 第13製造課」
「営業本部 第八営業部 営業六課」
(組織の長の職名:営業課長)
対策: 個人単位の期間制限を正確に管理するため、組織の長が誰なのかが明確になる最小単位まで記載する。
ミス3:指揮命令者が未記載または連絡先不明
NG例:
指揮命令者:営業部長
(連絡先の記載なし)
OK例:
指揮命令者:営業課 課長代理 田中三郎
TEL:03-xxxx-xxxx(内線12456)
Email:tanaka@humanhuumannma.com
携帯:090-xxxx-xxxx(緊急時)
対策: 実際に日々の業務指示を出す責任者の氏名、役職、複数の連絡手段を記載する。
ミス4:派遣料金の計算方法が不明確
NG例:
「時給3,000円」
(残業時、休日労働時の取扱いが不明)
OK例:
通常時間:時給3,000円
残業(法定内):時給3,000円
残業(法定外):時給3,750円(25%割増)
深夜:時給3,750円(25%割増)
休日労働:時給4,050円(35%割増)
深夜+休日:時給4,800円(60%割増)
対策: あらゆる労働時間パターンでの料金を明記し、後々のトラブルを防ぐ。
ミス5:契約解除条項の欠落
NG例:
契約解除に関する記載がない
OK例:
派遣先都合での中途解約の場合:
・30日前までに書面で通知
・通知なしの即時解約の場合、30日分の派遣料金を支払う
・派遣元は新たな就業機会確保に努める
・派遣先は休業手当等の費用を負担する
対策: 中途解約時の手続きと費用負担を明確にしておく。
ミス6:派遣可能期間制限の記載漏れ
NG例:
抵触日の記載がない
(有期雇用派遣労働者なのに記載していない)
OK例:
派遣可能期間の制限に抵触する日:令和9年4月1日
※無期雇用派遣労働者または60歳以上の者に限定しない場合
対策: 有期雇用の派遣労働者の場合は必ず抵触日を記載する。無期雇用または60歳以上に限定する場合は、その旨を明記し、抵触日は不要。
派遣先・派遣元それぞれの契約締結時チェックリスト
派遣先企業の個別契約チェックリスト
契約締結前に以下の項目を必ず確認しましょう:
基本情報
- □ 派遣労働者の人数は正確か?
- □ 派遣期間は事業所単位・個人単位の制限内か?
- □ 業務内容は具体的に記載されているか?
- □ 事業所名・所在地は正確か?
組織・責任者関係
- □ 組織単位は明確に記載されているか?
- □ 指揮命令者の氏名・連絡先は記載されているか?
- □ 派遣先責任者は適切に選任されているか?
就業条件
- □ 就業日・就業時間は正確か?
- □ 想定される時間外労働は記載されているか?
- □ 休憩時間、休日は正確に記載されているか?
料金関係
- □ 派遣料金と計算方法は明確か?
- □ 時間外・休日・深夜の割増率は記載されているか?
- □ 支払条件(締日、支払日)は明記されているか?
安全・労務管理
- □ 安全衛生に関する責任分担は明記されているか?
- □ 苦情処理の窓口は設定されているか?
- □ 契約解除時の措置は明記されているか?
福利厚生・その他
- □ 福利厚生施設の利用範囲は明確か?
- □ 必要なスキル・資格は明記されているか?
- □ 協定対象派遣労働者に限定するか否かの記載はあるか?
- □ 無期雇用・60歳以上に限定するか否かの記載はあるか?
派遣元企業の個別契約チェックリスト
法令順守関係
- □ 労働者派遣法第26条の法定記載事項はすべて記載されているか?
- □ 厚生労働省令で定められた事項は漏れなく記載されているか?
- □ 禁止業務への派遣契約になっていないか?
期間制限関係
- □ 事業所単位の抵触日は通知したか?
- □ 個人単位の期間制限は超えていないか?
- □ 無期雇用・60歳以上の記載は正確か?
派遣労働者保護
- □ 業務内容は派遣労働者のスキルに見合っているか?
- □ 安全衛生措置は十分に定められているか?
- □ 苦情処理体制は整っているか?
- □ 契約解除時の雇用安定措置は明記されているか?
料金・支払条件
- □ 派遣料金は適正か?
- □ 支払条件は自社の資金繰りに支障がないか?
- □ 時間外・休日労働の料金は明確か?
労働者派遣事業許可申請時の監査ポイント
当事務所が労働者派遣事業許可申請のための監査を行う際、労働者派遣契約に関して以下の点をチェックします。
監査での主な確認事項
1. 契約書ひな型の整備状況
- 基本契約書のひな型は適切か?
- 個別契約書のひな型は法定記載事項を網羅しているか?
- 紹介予定派遣用の契約書ひな型は別途用意されているか?
2. 法令順守状況
- 労働者派遣法第26条の記載事項が漏れなく記載されているか?
- 禁止業務への派遣契約がないか?
- 期間制限を超える契約がないか?
- 事業所抵触日の通知は適切に行われているか?
3. 契約管理体制
- 契約書の作成・審査フローは確立されているか?
- 契約期間の管理は適切に行われているか?(台帳整備)
- 電子契約を採用している場合、適切なシステムが使用されているか?
- 契約書の保管期間(3年間)は守られているか?
4. リスク管理
- 契約解除時の措置は適切に定められているか?
- 損害賠償条項は合理的な範囲か?
- 派遣先・派遣労働者双方の保護が考慮されているか?
- 秘密保持、個人情報保護の条項は適切か?
5. 実務運用状況
- 過去の契約書は適切に保管されているか?
- 契約更新時のチェック体制は整っているか?
- 派遣先・派遣労働者への説明は適切に行われているか?
適切な契約書が整備されていないと、許可申請時に指摘を受けたり、許可後の定期監査で問題となる可能性があります。
まとめ:労働者派遣契約は事業の根幹
労働者派遣契約は、派遣事業の根幹をなす重要な法律文書です。
押さえておくべき重要ポイント:
✓ 労働者派遣契約は「基本契約」と「個別契約」の2層構造
- 基本契約:年間取引の基本ルール、任意規定
- 個別契約:具体的な派遣内容、法定記載事項
✓ 基本契約の主な記載事項(14項目)
- 契約の目的
- 個別の派遣契約への委任事項と適用範囲
- 派遣料金の決定、計算、支払いに関する事項
- 派遣就業に伴う必要経費の負担に関する事項
- 派遣元の遵守事項及び努力義務
- 派遣先の遵守事項及び努力義務
- 契約違反時の損害賠償責任
- 派遣元責任者と派遣先責任者に関する事項
- 派遣労働者の遵守事項
- 派遣労働者の休暇取得と代替者派遣
- 派遣労働者交代に関する取扱い
- 基本契約及び個別契約の解除に関する事項
- 基本契約の有効期間及び契約更新
- その他(秘密保持、個人情報保護など)
✓ 個別契約には労働者派遣法第26条で定められた法定記載事項がある(17項目以上)
- 業務内容、責任の程度
- 事業所名、就業場所、組織単位
- 指揮命令者
- 派遣期間、就業日
- 就業時間、休憩時間
- 安全衛生、苦情処理
- 契約解除時の措置
- その他多数
✓ 2021年から電磁的記録(電子契約)での作成が可能
- 印紙税不要、即日締結可能
- テレワーク対応、保管場所不要
- ただし派遣先の承諾が必要
✓ 派遣先は契約内容をしっかり確認し、不明瞭な点は協議する
- 基本契約は派遣元主導で作成される傾向
- 損害賠償、料金改定などの条項は特に注意
✓ 契約はトラブル解決の拠り所となる重要な約束事
- 業務内容、組織単位、指揮命令者、料金体系は特に明確に
- 契約解除時の措置は詳細に定める
✓ 派遣労働者の人数も記載する
✓ 無期雇用・60歳以上の派遣労働者は期間制限の対象外
- その旨を契約書に明記すれば抵触日通知は不要
派遣事業者の皆様には、形式的な契約書作成に終わらず、実態に即した具体的で明確な契約書を作成することをお勧めします。明確な契約は派遣先との信頼関係を築き、派遣労働者の安心にもつながります。
また、電子契約システムの導入により、業務効率化とコスト削減が実現できます。時代に合った契約管理体制を整備することで、競争力のある派遣事業運営が可能になります。
トラブルが起こるリスクがつきものの派遣業務だからこそ、労働者派遣契約という問題解決の拠り所となる大切な約束事を、しっかりと整備することが何より重要です。
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投稿者プロフィール

- 労働者派遣事業許可に必要な監査や合意された手続に精通し、数多くの企業をサポートしてきました。日々の業務では「クライアントファースト」を何よりも大切にし、丁寧で誠実な対応を心がけています。監査や手続を受けなくても財産的基礎の要件をクリアできる場合には、そちらを優先してご提案するなど、常にお客様の利益を第一に考える良心的な姿勢が信条です。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
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