決算期が近づいてきたら着地見込みを計算しましょう
労働者派遣事業許可申請のための監査を数多くお引き受けしている中で、非常に残念なケースに遭遇することが少なくありません。それは、「決算日の前に決算の着地見込みを計算して事前に対策を立てていれば、本決算で十分に財産的基礎の要件を充足できたのに」というケースです。
実は、ほとんどの場合、事前に着地見込みを把握し適切な対策を講じていれば、高額な監査費用をかける必要がなかったかもしれないのです。
労働者派遣事業許可と財産的基礎の要件
労働者派遣事業の許可申請において、財産的基礎の要件を満たすことは必須条件です。多くの企業様が、決算が確定してから初めて「要件を満たしていない」という事実に気づき、慌てて監査を依頼されるケースが後を絶ちません。
事前対策の重要性
例えば、3月決算の会社であれば、1月頃には3月決算の着地見込みを計算することが可能です。この時点で予想される3月末の貸借対照表を作成し、財産的基礎の要件を満たすために必要な対策手法と対策額を算定していれば、ほとんどのケースで監査は必要なかったはずなのです。
具体的には以下のような対策が考えられます:
- 増資
- 役員借入金の資本への振替(DES)
- 不要な資産の売却による自己資本の改善
- 利益計画の見直しと経費の適正化
これらの対策は、決算日前であれば実行可能ですが、決算が確定した後では選択肢が大幅に限られてしまいます。
会社経営の鉄則:着地見込みの随時把握
労働者派遣事業許可申請に関係なく、会社経営の一般論としても、決算の着地見込みを随時把握しながら事業活動を行うことは鉄則です。
経営判断に不可欠な情報
経営者にとって、自社の財務状況をリアルタイムで把握することは、適切な経営判断を下すための必須条件です。しかし、多くの中小企業では、この着地見込みの把握が十分にできていないのが現状です。
中小企業における記帳体制の現状
中小企業の場合、自社の経理部では入出金の管理しか対応しておらず、記帳業務は顧問税理士事務所に任せているケースが非常に多く見られます。
税理士事務所との連携の重要性
このような体制であっても、顧問税理士事務所と積極的に相談しながら着地見込みを計算することは極めて重要です。多くの税理士事務所は、クライアント企業の決算予測や着地見込みの算定をサポートする体制を整えています。
月次決算を活用した着地見込み把握のメリット:
- タイムリーな経営判断が可能
- 資金繰りの計画が立てやすい
- 問題点の早期発見と対策
- 決算対策の時間的余裕の確保
着地見込み把握の具体的なメリット
金融機関対策
決算の成績次第で、金融機関は融資をしてくれるかどうか、その条件がどうなるかが大きく変わります。
- 良好な決算見込みの場合: 事前に金融機関と相談し、好条件での融資交渉が可能
- 厳しい決算見込みの場合: 早めに対策を講じることで、最悪の事態を回避
節税対策
反対に、予想以上に利益が多すぎる場合は、節税対策を講じる必要があるかもしれません。
決算前に検討できる節税対策の例:
- 設備投資の前倒し実行
- 役員報酬の見直し
- 決算賞与の支給
- 保険商品の活用
- 修繕費の前倒し計上
これらの対策は、決算日前に実行してこそ効果を発揮するものであり、決算確定後では手遅れとなります。
「事後の帳簿調整」では遅すぎる
「着地見込みを算定せず決算期を迎えて、事後的に帳簿の調整でなんとかならないか」と悩む経営者の方も少なくありません。しかし、これでは遅すぎるのです。
事後調整の限界
決算が確定した後にできることは、非常に限られています:
- 会計上の選択適用: すでに取引が完了しているため、処理方法の選択肢が限定的
- 税務上の制約: 実態を伴わない帳簿操作は税務リスクを伴う
- 監査対応: 労働者派遣事業許可のための監査が必要になり、追加コストが発生
実践的な着地見込み計算のステップ
ステップ1:定期的な試算表の入手(毎月または隔月)
顧問税理士事務所から、定期的に試算表を入手しましょう。最低でも2か月に1回、できれば毎月入手することが理想です。
ステップ2:残期間の予測(決算3か月前から)
決算日の3か月前(3月決算なら1月)から、残り期間の売上と費用を予測します。
- 既存の契約から確実な売上を把握
- 見込める新規受注を加味
- 定期的な経費を計算
- 臨時的な支出予定を確認
ステップ3:着地見込み貸借対照表・損益計算書の作成
試算表と残期間の予測を組み合わせて、決算時の財務諸表を予測します。
ステップ4:必要な対策の検討と実行
着地見込みから、目標とする財政状態との差異を分析し、必要な対策を検討・実行します。
労働者派遣事業許可申請を目指す企業様へ
労働者派遣事業許可の取得を計画されている企業様は、許可申請のタイミングから逆算して、財産的基礎要件を満たす決算書を準備する必要があります。
理想的なスケジュール
- 申請予定日の1年前: 財産的基礎要件の確認と目標設定
- 決算の3~4か月前: 着地見込みの算定と対策の検討
- 決算の1~2か月前: 必要な対策の実行
- 決算確定後: 要件充足の確認と申請準備
このようなスケジュールで進めることで、無駄な監査費用をかけずに、確実に要件を満たす決算書を作成できます。
まとめ
決算の着地見込みを事前に把握することは、労働者派遣事業許可申請における財産的基礎要件の充足だけでなく、健全な会社経営のために不可欠な取り組みです。
着地見込み計算の3つの重要ポイント:
- 早期着手: 決算の3か月前から着地見込みを計算開始
- 専門家との連携: 顧問税理士事務所と密に相談
- 事前対策: 決算日前に必要な対策を実行
「決算が確定してから慌てる」のではなく、「計画的に理想の決算を作り上げる」という姿勢が、これからの時代には必要です。
当事務所では、労働者派遣事業許可申請のための監査だけでなく、決算前の着地見込み算定支援や財産的基礎要件を満たすためのコンサルティングも行っております。お気軽にご相談ください。
お問い合わせ: 労働者派遣事業許可申請の監査や決算対策についてのご相談は、お気軽にお問い合わせフォームよりご連絡ください。管理の方法について相談したい」など、少しでも不安な点がございましたら、手遅れになる前に、ぜひ一度私たち専門家にご相談ください。
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投稿者プロフィール

- 労働者派遣事業許可に必要な監査や合意された手続に精通し、数多くの企業をサポートしてきました。日々の業務では「クライアントファースト」を何よりも大切にし、丁寧で誠実な対応を心がけています。監査や手続を受けなくても財産的基礎の要件をクリアできる場合には、そちらを優先してご提案するなど、常にお客様の利益を第一に考える良心的な姿勢が信条です。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
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