【派遣許可申請】役員の兼業でストップ!?労働局が求める「念書」の書き方と注意点
「労働者派遣事業の許可申請、準備は万端!」…のはずが、思わぬところで労働局から指摘を受けてしまった、というご相談をいただくことがあります。今回は、特に役員の兼業が論点となる「専属性」の問題と、その対応策について、具体的なエピソードを交えて解説します。
「代表社員さん、他でもお勤めですよね?」労働局からの指摘
先日、ある合同会社様から派遣許可申請に関するご相談がありました。
「当社は、労働者派遣事業の許可申請を進めています。派遣元責任者は別の従業員が務めますが、万が一に備え、代表社員である私が『派遣元責任者の職務代行者』に就任する予定です。
書類を準備し、労働局に事前相談に伺ったところ、担当官から私の履歴書について質問がありました。『代表社員さんは、現在も株式会社Zで嘱託社員として勤務されていますね。この場合、株式会社Zから「当社の業務より、御社での代表社員業務を優先して問題ない」という内容の書面を提出していただく必要があります』と言われてしまいました。一体どういうことでしょうか?」
まさに、これが役員の兼業における典型的なケースです。なぜ、このような書面が求められるのでしょうか?
なぜ「念書」が必要? キーワードは「専属性」
労働者派遣法では、派遣労働者の雇用を守り、適切な事業運営を確保するため、派遣元責任者に対して「専ら派遣事業に関する業務に従事する者であること」を求めています。これを「専属性の要件」と呼びます。
職務代行者も、責任者が不在の際にはその職務を代行する重要な役割を担うため、この専属性が準用されると考えられています。
労働局が役員の兼業をチェックする理由は、主に次の2点です。
- 職務遂行への懸念: 兼業先の業務が忙しく、いざという時に派遣元責任者(代行者)としての職務(派遣労働者からの相談対応、トラブル解決など)を迅速・適切に行えないのではないか?
- 名ばかり役員の防止: 形式的に名前を貸しているだけで、実質的に業務に関与できない状態ではないか?
労働局は、こうした懸念を払拭するための客観的な証拠として、兼業先の会社からの「念書」や「確認書」の提出を求めるのです。この書面は、「兼業先も本人の派遣事業への関与を理解・承諾しており、業務に支障が出ないよう協力します」という意思表示の役割を果たします。
「念書(確認書)」の書き方と文例
この書面に決まったフォーマットはありませんが、誰が、誰に対して、何を約束するのかを明確に記載する必要があります。以下の要素を盛り込んで作成しましょう。
記載すべき主な内容
- 宛名: 申請先の労働局長(例:東京労働局長 殿)
- 作成日: 書類を作成した日付
- 作成者: 兼業先の会社情報(会社名、所在地、代表者役職・氏名)と、会社の実印
- 対象者: 兼業している役員(今回の場合、代表社員)の氏名
- 本文:
- 対象者が兼業先の従業員(嘱託社員など)であること。
- 対象者が、申請会社で代表社員を務め、派遣元責任者職務代行者に就任することを会社として承諾している旨。
- 申請会社での職務遂行を優先することに同意し、兼業先の業務との調整は可能で、職務に支障がないことを確認する旨。
【文例】
令和〇年〇月〇日
〇〇労働局長 殿
確認書
当社の嘱託社員である 〇〇 〇〇 氏は、合同会社△△(※申請会社名)の代表社員として、同社が行う労働者派遣事業において派遣元責任者職務代行者に就任することを、当社は承諾しております。
同氏が、当該職務を遂行するにあたり、当社の業務との調整は可能であり、その責務を果たすことに支障がないことを確認いたします。
所在地 東京都渋谷区東一丁目〇番〇号
会社名 株式会社Z
代表者 代表取締役 山田 太郎 ㊞
忘れてはいけない3つの注意点
最後に、この念書を準備する上での注意点を3つお伝えします。
- 提出がゴールではない
この書面は、あくまで許可審査における一資料です。提出すれば100%許可が下りるという「魔法の書類」ではありません。労働局は、申請内容全体を見て総合的に判断します。 - 「実態」が最も重要
仮に書面を提出しても、その後のヒアリングなどで「どう見ても兼業先の業務がメインで、派遣事業の業務に充てる時間がない」と判断されれば、専属性が認められない可能性があります。書面の内容と、実際の勤務実態が一致していることが大前提です。 - 迷ったら労働局へ事前相談を
最も確実な方法は、申請先の労働局の担当部署に「役員の兼業」の状況を正直に話し、どのような対応が必要か直接確認することです。担当官から書面の記載内容について具体的なアドバイスをもらえることも多く、二度手間を防ぐことができます。
労働者派遣事業の許可申請は、監査証明の取得をはじめ、多くの書類作成と厳格な要件が求められます。今回のような「専属性」の問題など、細かな点でつまずかないためにも、経験豊富な専門家にご相談いただくことをお勧めします。
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投稿者プロフィール

- 労働者派遣事業許可に必要な監査や合意された手続に精通し、数多くの企業をサポートしてきました。日々の業務では「クライアントファースト」を何よりも大切にし、丁寧で誠実な対応を心がけています。監査や手続を受けなくても財産的基礎の要件をクリアできる場合には、そちらを優先してご提案するなど、常にお客様の利益を第一に考える良心的な姿勢が信条です。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。





