労働者派遣事業許可申請における「監査」と「合意された手続」の違いを徹底解説
労働者派遣事業の許可申請や更新手続きをご検討中の事業者様にとって、財産的基礎の要件は重要なチェックポイントの一つです。そして、その要件をクリアするために「監査」や「合意された手続」といった言葉を耳にし、戸惑う方もいらっしゃるかもしれません。
当ページでは、これらの手続きが具体的にどのようなもので、なぜ必要になるのか、そしてお客様にとってどちらが最適な選択肢なのかを、わかりやすく解説します。
【最重要】まず知っておくべきこと:これらの手続きは「例外」です!
最初にお伝えしたい最重要ポイントは、労働者派遣事業許可の申請において「監査」や「合意された手続」が必ずしも必要ではないということです。
本決算で財産的基礎の要件(基準資産額2,000万円以上、自己名義の現金・預金の額が1,500万円以上など)をクリアできていれば、これらの手続きは一切不要です。
監査や合意された手続が必要となるのは、「本決算で財産的基礎の要件をクリアできなかった場合」に限られます。 つまり、通常は不要な「例外的な手続き」である、とご理解ください。
「監査」と「合意された手続」の具体的な違いを徹底比較!
では、その「例外的な手続き」である「監査」と「合意された手続」にはどのような違いがあるのでしょうか。両者の特徴を比較しながら見ていきましょう。
監査 | 合意された手続 | |
目的 | 財務諸表(決算書全体)が、適正に作成されているかについて、公認会計士が意見を表明する。 | 会社と公認会計士が合意した特定の手続きを実施し、その結果を報告する。意見表明は行わない。 |
対象範囲 | 決算書全体の信頼性 | 特定の勘定科目や取引、財産的基礎の要件関連項目など、合意した範囲のみ |
公認会計士の責任 | 決算書全体に対する意見表明の責任を負うため、非常に重い。 | 合意された手続きが適切に実施されたことに対する責任に限定される。 |
手続きの厳格性・時間 | 法律や会計基準に基づき、実査、立会、確認、視察など多岐にわたる厳格な手続きが義務付けられ、時間と労力がかかる。 | 会社と公認会計士が合意した手続きのみを実施するため、柔軟で迅速に進められる。 |
費用 | 手続きの厳格性・範囲・責任の重さから、高額になる傾向がある。 | 対象範囲が限定され、手続きも柔軟なため、比較的安価に抑えられる。 |
報告書 | 監査意見が付された「監査報告書」 | 実施した手続きと発見事項を記載した事実認定に関する報告書 |
(注)監査の場合、公認会計士は決算書全体が適正であるかについて「お墨付き」を与えることになります。そのため、万が一後で重大な誤りが発見された場合、その責任は非常に重くなります。 一方、合意された手続では、公認会計士は「〇〇という手続きを実施した結果、△△という事実が確認できました」と、事実を報告するにとどまります。そのため、公認会計士の責任は、合意された手続きを適切に実施したか否かに限定されるのです。決して手抜きということではなく、責任の範囲が「限定されている」とご理解ください。
新規申請と更新申請で異なる選択肢
「監査」と「合意された手続」は、労働者派遣事業許可の新規申請と更新申請とで、どちらを選択すべきか(あるいは選択できるか)が異なります。
新規で労働者派遣事業許可を申請する場合:監査を受けるのが一般的です
新規で許可を申請する際に、本決算で財産的基礎の要件をクリアできなかった場合は、原則として「監査」を受けることになります。 これは、初めて許可を得るにあたり、企業の財務状況全体に対する信頼性を公的に保証する必要があるためです。実務上、新規申請では監査が必須であると認識しておいてください。
更新で労働者派遣事業許可を申請する場合:合意された手続が絶対におすすめ!
すでに労働者派遣事業の許可をお持ちの会社様が、その許可を更新する際に本決算で財産的基礎の要件をクリアできなかった場合、選択肢が大きく広がります。
更新申請においては、「監査」でも「合意された手続」でも、どちらでも認められるというルールになっています。
この場合、実務上は「合意された手続」を強くおすすめします。 その理由は以下の通りです。
- 費用が安い:監査に比べて、大幅に費用を抑えることが可能です。
- 時間が早い:対象範囲が限定され、手続きも柔軟なため、短期間で報告書を作成できます。
- 手続きが簡単:会社様が準備する資料も監査より少なく、担当者の負担も軽くなります。
監査は、決算書全体を対象とするため、非常に時間とコストがかかります。特に更新申請の場合、すでに事業の実績があるため、財産的基礎の要件確認に特化した「合意された手続」で十分対応できるケースがほとんどです。
「監査を受けるのは新規の申請の場合だけ」 と覚えておくと良いでしょう。更新時に本決算で要件を満たせない場合は、迷わず「合意された手続」をご検討ください。
まとめ
労働者派遣事業許可の申請・更新において、「監査」や「合意された手続」が必要となるのは、「本決算で財産的基礎の要件を満たせなかった場合」の例外的な措置です。
そして、その場合でも、
- 新規申請では、財務状況全体への信頼性を担保するため、「監査」 を受けることが一般的です。
- 更新申請では、より迅速かつ効率的に手続きを進められる 「合意された手続」 が、費用・時間の面から圧倒的に有利であり、実務上強く推奨されます。
繰り返しになりますが、監査と合意された手続の検討の前にあらかじめご確認いただきたいのは、労働者派遣事業許可の申請にあたっては、基準資産額や現金・預金の要件を満たしていることが前提条件であるということです。
具体的には、
- 月次決算において、「基準資産額2,000万円以上」
- 月次決算において、自己名義の現金・預金の額が「1,500万円以上」
これらの要件を満たしていなければ、そもそも労働者派遣事業許可の申請を行うことができません。
ですので、たとえば月次決算書にそれらの条件を満たしていない状態の資料を持ってきて、「これに合意された手続をお願いします」とご依頼いただいても、ご期待に添うことはできません。なぜなら、それは「申請に必要な前提条件」が整っていない段階だからです。
私たちは、貴社の申請がスムーズに進むように、必要な条件をしっかりと確認し、そのうえで適切な支援をさせていただきたいと考えています。ですから、まずは基準資産額や現金預金の状況を整え、条件を満たしたうえで、必要に応じて準備を進めていきましょう。
私たちも、貴社の事業が円滑に進むように全力でサポートいたしますので、ご相談やご質問があれば、いつでも遠慮なくお声かけください。
当会計事務所では、労働者派遣事業許可に関する財産的基礎の要件クリアをサポートする専門的なサービスを提供しております。
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投稿者プロフィール

- 労働者派遣事業許可に必要な監査や合意された手続に精通し、数多くの企業をサポートしてきました。日々の業務では「クライアントファースト」を何よりも大切にし、丁寧で誠実な対応を心がけています。監査や手続を受けなくても財産的基礎の要件をクリアできる場合には、そちらを優先してご提案するなど、常にお客様の利益を第一に考える良心的な姿勢が信条です。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
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