合意された手続で公認会計士が最も注意深くチェックする項目とは?

人材派遣会社の経理担当者様から、よくこんなご質問をいただきます。

「合意された手続を受けるにあたって、公認会計士が最も注意を払ってチェックするのはどんな項目ですか?」

この質問への答えは明確です。

「現金および預金の過大計上の有無」です。

「えっ、預金って通帳を見せればいいだけじゃないの?」と思われるかもしれません。しかし、実務指針4450には、現金および預金を特にチェックしなければならないと明記されているのです。

なぜ「現金および預金」が最重要チェック項目なのか?

実務指針4450第13項の規定

専門業務実務指針4450(労働者派遣事業等の許可審査に係る中間又は月次決算書に対する合意された手続業務に関する実務指針)第13項には、以下のように明確に規定されています:

「許可要件に関連する科目、特に現金及び預金の過大計上の有無について手続を実施しなければならない。」

この「特に」という言葉が重要です。実務指針では、現金および預金を他の科目よりも優先的にチェックすべき対象として位置づけているのです。

なぜ現金および預金が重要なのか?  2つの理由

理由1: 現金預金要件が許可の生命線だから

労働者派遣事業の許可要件では、「自己名義の現金預金額が1,500万円に事業所数を乗じた額以上」という明確な基準が設けられています。

具体的な要件

  • 事業所が1ヶ所の場合: 現金預金 1,500万円以上
  • 事業所が2ヶ所の場合: 現金預金 3,000万円以上
  • 事業所が3ヶ所の場合: 現金預金 4,500万円以上

つまり、基準資産額がいくら高くても、現金預金がこの基準を満たさなければ許可要件をクリアできないのです。

現金預金が過大に計上されていれば、本来は要件を満たしていないのに満たしているように見えてしまいます。逆に言えば、現金預金が1円でも不足していれば、その時点で許可申請はできません

だからこそ、公認会計士は現金預金の金額が本当に実在するのか、過大計上されていないかを最優先でチェックするのです。

理由2: 実務指針が明確に指定しているから

実務指針第13項(1)では、「特に現金及び預金の過大計上の有無」と名指しでチェック対象に挙げています。

これは公認会計士に対する明確な指示であり、どんなに他の科目が正確でも、現金預金のチェックを省略することはできません

公認会計士は具体的にどうチェックするのか?

当事務所が合意された手続で実施する現金預金のチェック内容をご紹介します。

1. 預金残高証明書の入手

最も基本的かつ重要な手続です。

  • 金融機関発行の公式な残高証明書を入手
  • 決算日時点の残高を第三者証拠で確認

実務上のポイント

  • 残高証明書の発行には1週間程度かかる場合あり
  • 月次決算日を基準日として指定する必要あり
  • 全ての預金口座について入手が必要

3. 現金有高表の検証

現金有高表を毎日作成していらっしゃる前提で、月次決算日の現金有高表の金額が総勘定元帳の現金残高と一致していることを確認します。

4. 年度決算書からの連続性確認

実務指針第13項(2)に基づき、「年度決算書からの連続性」も重要なチェックポイントです。

確認内容

最近の年度決算書(税務申告済み)
  ↓
中間・月次決算書まで残高の変動を追跡
  ↓
不自然な増減がないか確認

具体的な手続き

  • 年度決算書(税務申告書と一体のもの)と総勘定元帳の期首残高との突合

現金預金以外でもチェックされる重要科目

実務指針第13項(1)では、現金預金に加えて、「基準資産額の算定に重要な影響を及ぼす科目」についても手続を実施することが求められています。

資産科目のチェックポイント(過大計上の有無)

売掛金

  • 回収遅延債権の有無
  • 架空売上に基づく架空売掛金の有無

負債科目のチェックポイント(過小計上の有無)

買掛金・未払金

  • 期末時点で計上漏れはないか
  • 請求書の到着遅れによる未計上

経理担当者が事前準備すべきこと

合意された手続をスムーズに進めるため、経理担当者様にご準備いただきたい資料をまとめます。

【必須】現金預金関連の資料

  1. 預金残高証明書(全口座)
    • 決算日時点のもの
    • 原本またはPDF
  2. 預金通帳のコピー
    • 決算日前後1ヶ月分を記帳したもの
    • ネットバンキングの場合は取引明細
  3. 現金出納帳
    • 決算日時点の残高が明確なもの
  4. 年度決算書(税務申告書付)
    • 税務署受付リーフレットのあるもの
    • e-Taxの場合は受信通知

【重要】その他の資料

  1. 総勘定元帳
    • 年度決算から月次決算までの全科目
  2. 大口取引の証憑
    • 決算日前後の大きな入出金に関する契約書・請求書

まとめ: 「現金預金」は合意された手続の生命線

合意された手続において、公認会計士が最も注意深くチェックするのは現金および預金の過大計上の有無です。

これは、実務指針4450第13項で明確に規定されており:

✓ 財産的基礎要件の核心科目だから
✓ 操作されやすい科目だから
✓ 厚生労働省が最も警戒しているから
✓ 実務指針が名指しで指定しているから

経理担当者が押さえるべき5つのポイント

  1. 預金残高証明書は早めに手配(発行に1週間かかる)
  2. 全ての預金口座を計上(休眠口座含む)
  3. 年度決算からの連続性を確認しておく

合意された手続は監査よりも簡便ですが、現金預金に関しては相応の厳格さでチェックされるとお考えください。

お問い合わせ

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投稿者プロフィール

jinzaihaken
jinzaihaken
労働者派遣事業許可に必要な監査や合意された手続に精通し、数多くの企業をサポートしてきました。日々の業務では「クライアントファースト」を何よりも大切にし、丁寧で誠実な対応を心がけています。監査や手続を受けなくても財産的基礎の要件をクリアできる場合には、そちらを優先してご提案するなど、常にお客様の利益を第一に考える良心的な姿勢が信条です。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。