労働者派遣事業許可の財産的基礎の要件とは? 新規申請・更新時の注意点の解説

労働者派遣事業を営むためには、厚生労働大臣の許可を受ける必要があります。この許可を取得するための重要な要件の一つが「財産的基礎の要件」です。この要件で躓いてしまうケースが多く見られます。財産的基礎の要件の詳細と、新規申請・更新時の注意点について詳しく解説いたします。

労働者派遣事業許可の財産的基礎要件とは

労働者派遣事業許可を申請するためには、以下の財産的基礎の要件を満たす必要があります。

基本的な財産要件

項目要件
基準資産額2,000万円以上
現金預金額1,500万円以上
負債比率基準資産額の7分の1以下

基準資産額とは、簡単に言えば、資産の総額から負債の総額を控除した額(純資産額)をいいます。この金額が2,000万円以上であることが必要です。また、現金預金については、定期預金を含む現金及び預金の合計額が1,500万円以上必要となります。なお、実際には事業所数でこの要件は変わってきますし、営業権や繰延資産の額は基準資産額を押し下げるなど、細かなルールがありますので、実際の申請にあたっては必ず専門家にご相談ください。

負債比率の計算方法

負債比率は以下の計算式で算出されます:

負債比率 = 負債総額 ÷ 基準資産額

この比率が1/7(約14.3%)以下である必要があります。

新規申請時の注意点

決算書での判定が困難なケース

新規で労働者派遣事業許可を申請する際、直近の決算書で財産的基礎の要件を満たしていない場合があります。このような場合、一般的には以下の対応が必要となります。

  1. 増資の実施による資本金の増加
  2. 借入金の返済による負債の減少
  3. 月次決算書の作成と公認会計士による証明

月次決算書による証明の重要性

直近の決算書(本決算)では財産的基礎の要件を満たせていない場合、申請時点での財政状況を示す月次決算書を作成し、公認会計士による監査または合意された手続による証明を受ける必要があります。

更新時の特別な注意事項

継続的な財産要件の維持

労働者派遣事業許可は3年または5年ごとに更新が必要ですが、更新時においても財産的基礎の要件を満たしている必要があります。更新申請では、直近の決算書をもとに判定されるため、日頃から財務状況の管理が重要です。

業績悪化時の対応策

更新時期において業績が悪化し、決算書で財産的基礎の要件を満たしていない場合、一般的には以下の対応が考えられます。

  • 役員からの借入を資本金に振り替える(DES:デット・エクイティ・スワップ)
  • 新たな出資者による増資
  • 不要な固定資産の売却による現金化
  • 借入金の返済による負債圧縮

公認会計士による証明の必要性

財産的基礎の要件を満たしていることを証明するために、公認会計士による以下のいずれかの証明が必要となります:

監査証明

監査証明は、公認会計士が月次決算書の適正性について意見を表明するものです。より厳格な手続きが求められ、証明力が高い反面、費用と時間がかかります。

合意された手続

合意された手続は、会社さまと公認会計士事務所が契約において規定した特定の項目について、公認会計士が確認した事実を報告するものです。監査証明と比較して、手続きが簡素化されており、費用も抑えられます。

労働者派遣事業許可の財産要件でお困りの方へ

当事務所では、労働者派遣事業許可の新規申請・更新申請に関する財産的基礎の要件の判定から、月次決算書の作成までをお引き受けすることが可能です。その場合、監査証明・合意された手続実施結果報告書は提出できません。

まずはお気軽にご相談ください。

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労働者派遣事業許可申請で公認会計士の監査証明が必要になるケースと手続きの流れ

労働者派遣事業許可申請において、公認会計士による監査証明が必要となるケースが多くあります。どのような場合に監査証明が必要となるのか、また具体的な手続きの流れについて解説いたします。

監査証明が必要となる具体的なケース

新規申請時のケース

新規で労働者派遣事業許可を申請する際、以下の状況では公認会計士による監査証明が必要となります。

  1. 直近決算書で財産要件を満たしていない場合
    基準資産額2,000万円以上、現金預金1,500万円以上の要件を満たしていない
  2. 申請直前に財務改善を行った場合
    増資、借入金返済、資産売却などにより財産状況が改善された

更新申請時のケース

更新申請においては、以下の場合に監査証明または合意された手続実施結果報告書が必要となります。

  • 直近の決算書で財産的基礎要件を満たしていない
  • 赤字決算により純資産が大幅に減少している
  • 更新申請直前に財務改善策を実施した

監査証明と合意された手続の違い

項目監査証明合意された手続
証明の性質財務諸表の適正性に対する意見表明特定項目の確認事実の報告
手続きの厳格性非常に厳格相対的に簡素
所要時間2-4週間当日-2週間
費用高い圧倒的に安い
証明力高い限定的

監査証明手続きの具体的な流れ

Step 1: 初回相談・見積もり

まず、企業の財務状況、申請スケジュール、必要書類等について詳細にヒアリングを行います。その上で、監査証明または合意された手続のいずれが適切かを判断し、費用と期間の見積もりを提示いたします。

Step 2: 契約締結・資料収集

監査証明または合意された手続に関する契約を締結した後、以下の資料を収集いたします。

  • 直近の決算書・税務申告書
  • 月次試算表・総勘定元帳
  • 預金通帳のコピー
  • 固定資産台帳
  • 借入金残高証明書
  • その他関連する会計帳簿・証憑書類

Step 3: 監査手続きの実施

収集した資料をもとに、以下の監査手続きを実施します。

  1. 預金残高確認
    銀行残高証明書とは異なり、公認会計士事務所から銀行に直接郵送にて残高確認の依頼を送り、銀行から公認会計士事務所に対して直接残高を証明してもらいます
  2. 固定資産の実査
    主要な固定資産の実在性確認
  3. 借入金残高の確認
    銀行残高証明書とは異なり、公認会計士事務所から銀行に直接郵送にて残高確認の依頼を送り、銀行から公認会計士事務所に対して直接残高を証明してもらいます
  4. 財産要件の計算確認
    基準資産額、現金預金額、負債比率の計算
  5. 会計処理の適切性確認
    月次決算書の作成プロセスと会計処理の妥当性確認

Step 4: 監査報告書の作成

監査手続きが完了した後、監査結果をまとめた監査報告書を作成します。労働者派遣事業許可申請に特化している監査証明である旨も記載されます。

合意された手続の特徴

手続きの内容

合意された手続では、労働局が指定する以下の項目について確認を行います。

  • 総勘定元帳と月次決算書の突合
  • 現金及び預金残高の確認
  • 売掛金等の取引の一部につき証憑突合 など

実施上の注意点

重要な注意点:合意された手続は監査証明と比較して手続きが簡素化されています。基本的には、表明される意見は非常に限定的です。

監査証明を受ける際の準備事項

事前準備のポイント

スムーズに監査証明を受けるために、以下の準備を行ってください:

  1. 会計帳簿の整備
    月次決算書作成の根拠となる会計帳簿を適切に整備する
  2. 証憑書類の整理
    領収書、請求書、契約書等の証憑書類を整理・保管する
  3. 銀行残高確認の準備
    全ての預金口座について、監査基準日現在の残高確認の手続きを実施しますので、銀行印の押捺のご準備をお願いします
  4. 固定資産の現物管理
    固定資産台帳と現物の整合性を確認しておく

監査証明・合意された手続のご相談はこちら

労働者派遣事業許可申請に必要な監査証明・合意された手続について、経験豊富な公認会計士が対応いたします。お客様の状況に応じて最適な手続きをご提案いたします。

お急ぎの案件にも対応可能です。まずはお気軽にお問い合わせください。

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よくあるトラブルと対処法

期限間際での発覚パターン

問題:更新申請期限直前になって財産的基礎の要件を満たしていないことが判明

対処法:

  • 緊急での増資または借入金の資本化を実施
  • 公認会計士と密に連携し、最短スケジュールでの証明書取得
  • 必要に応じて労働局と事前相談を実施

会計処理の不備パターン

問題:月次決算書作成時に会計処理の誤りが発見される

対処法:

  • 過年度決算書の修正再表示
  • 月次決算書での適切な修正処理

労働者派遣事業許可更新のサポートについて

当事務所では、労働者派遣事業許可の更新申請について、財産的基礎の要件の事前チェックから月次決算書の作成までの作業をお引き受けすることも可能です。その場合は別の公認会計士事務所から証明を受ける必要がございますが、その点もフォローさせていただきます。

主なサービス内容:

  • 財産的基礎の要件の事前診断
  • 財産的基礎の要件改善策の提案・実行支援
  • 月次決算書の作成代行
  • 更新申請スケジュールの管理

更新期限が迫っている緊急案件にも対応いたします。まずはお気軽にご相談ください。

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投稿者プロフィール

jinzaihaken
jinzaihaken
労働者派遣事業許可に必要な監査や合意された手続に精通し、数多くの企業をサポートしてきました。日々の業務では「クライアントファースト」を何よりも大切にし、丁寧で誠実な対応を心がけています。監査や手続を受けなくても財産的基礎の要件をクリアできる場合には、そちらを優先してご提案するなど、常にお客様の利益を第一に考える良心的な姿勢が信条です。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。