労働者派遣事業許可申請時の財産的基礎の要件の盲点?! 繰延資産の罠から抜け出す方法

人材派遣ビジネスを始めるにあたって、労働者派遣事業許可取得は避けて通れない道です。数々の要件の中でも、特に重要なのが「基準資産額2,000万円以上」という要件。しかし、この基準資産額の計算には、思わぬ落とし穴が潜んでいることをご存知でしょうか?

今回は、その落とし穴、「繰延資産」に焦点を当て、労働者派遣事業許可申請を検討しているあなたに、分かりやすく解説します。

基準資産額2,000万円の壁! クリアするための計算式

まずは、基準資産額の計算方法を確認しましょう。一見単純に見えますが、実は細かいルールが存在します。

基準資産額 = 総資産 - 負債 - 繰延資産 - 営業権

ここで注目すべきは、「繰延資産」「営業権」です。これらは、総資産からマイナスする必要があるため、基準資産額を大きく左右する可能性があります。

特に、中小企業の場合、繰延資産や営業権が意外と大きく、基準資産額を2,000万円以上にするのが難しいケースも少なくありません。実際に、私が相談を受けたある社長さんは、総資産から負債を引いた額は十分だったものの、繰延資産を考慮した結果、基準資産額が2,000万円を下回り、許可申請を断念せざるを得ませんでした。

労働局は(どこの、とは申しません。東〇労働局で実際に経験したお話です)、基準資産額の要件を満たさない場合、「なんともなりません」と告げます。そうならないためにも、繰延資産についてしっかりと理解しておきましょう。

繰延資産ってナニ? 分かりやすく解説!

では、繰延資産とは一体何なのでしょうか? 繰延資産とは、「支出の効果が将来にわたって及ぶ費用」のことです。簡単に言うと、「今お金を払ったけど、その効果はこれからじわじわと出てくる費用」を指します。

例えば、以下のようなものが繰延資産に該当します。

  • 創立費: 会社設立のためにかかった費用(定款作成費用、登記費用など)
  • 開業費: 事業開始のためにかかった費用(広告宣伝費、市場調査費など)
  • 開発費: 新技術や新製品の開発にかかった費用
  • 株式交付費: 新株発行のためにかかった費用
  • 社債発行費: 社債発行のためにかかった費用

これらの費用は、支出した時点で全額費用として計上するのではなく、数年間にわたって少しずつ費用として計上(償却)していきます。

なぜこのような処理をするのでしょうか?  それは、これらの費用が、将来の収益を生み出すための投資とみなされるからです。費用を将来にわたって配分することで、期間損益の計算をより正確に行うことができます。

繰延資産の種類:会計と税務の違いに注意!

ここで注意しなければならないのが、「会計上の繰延資産」「税務上の繰延資産」の違いです。

  • 会計上の繰延資産: 企業会計原則に基づいて計上される繰延資産。
  • 税務上の繰延資産: 法人税法に基づいて計上される繰延資産。

労働者派遣事業許可申請において、基準資産額を計算する際に控除しなければならないのは、「会計上の繰延資産」のほうです。

税務上の繰延資産は、一般に会計上は長期前払費用などの勘定科目で掲記されるので基準資産額の計算に影響を与えません。

なぜこのような違いがあるのでしょうか? それは、会計と税務の目的が異なるからです。

  • 会計の目的: 企業の財政状態や経営成績を、利害関係者(投資家、債権者など)に正しく伝えること。
  • 税務の目的: 税金の計算を公平に行うこと。

会計は、企業の経済活動の実態を反映することを重視するため、将来の収益に貢献する費用を繰延資産として計上します。かなり限定的に繰延資産をとらえています。

一方、税務は、課税の公平性を重視するため、繰延資産の範囲を広くとらえています。

労働者派遣事業許可申請、繰延資産の落とし穴を回避するには?

では、労働者派遣事業許可申請において、繰延資産の落とし穴を回避するためには、どのような点に注意すれば良いのでしょうか?

  1. 会計帳簿の確認: まずは、会計帳簿を確認し、繰延資産が計上されているかどうかを確認しましょう。特に、創立費や開業費は、多くの企業で計上されている可能性があります。
  2. 専門家への相談: 会計処理に不安がある場合は、税理士や会計士などの専門家に相談することをおすすめします。専門家は、適切な会計処理をアドバイスしてくれるだけでなく、基準資産額の計算もサポートしてくれます。
  3. 繰延資産の償却: 繰延資産は、一定期間にわたって償却する必要があります。償却期間は、法律で定められており、最長で5年間です。繰延資産をの償却を適切に行っていないのであれば、これを好機と捉え早期に償却するのもおすすめです。
  4. 不要な繰延資産の洗い出し: 繰延資産の中には、実際には価値がなくなっているものや、将来の収益に貢献しないものも含まれている可能性があります。これらの繰延資産は、一括で費用処理を行うことで、帳簿から消すことができます。

繰延資産を減らすための具体的な方法

さらに、繰延資産を減らすための具体的な方法をいくつかご紹介します。

  • 創立費・開業費の早期償却: 創立費や開業費は、5年以内の任意の期間で償却することができます。任意の期間とは、1年でも良いということです。
  • 開発費の減損処理: 開発費は、将来の収益が見込めなくなった場合、一括で帳簿から消すのも一法です。
  • 株式交付費・社債発行費の一括費用処理: 株式交付費や社債発行費は、繰延資産として計上する代わりに、支出した事業年度に一括で費用処理することもできます。税務上の損金算入も踏まえて、事前に税理士に相談することをおすすめします。

成功事例:繰延資産対策で許可取得!

実際に、私が相談を受けたある社長さんは、繰延資産対策を徹底的に行った結果、無事に労働者派遣事業許可を取得することができました。

その社長さんは、創業間もない会社を経営しており、創立費や開業費が多額に計上されていました。当初、基準資産額は2,000万円に届かず、許可取得は絶望的でした。

しかし、私は、その社長さんと共に、以下の対策を実行し、法人税申告の損金を増やし、それに対応させて短期前払費用の一括費用処理を適切な期間対応に切り替えました。

  1. 繰延資産の洗い出し: 不要な繰延資産を洗い出し、費用処理を促進した。
  2. 繰延資産の早期償却: 繰延資産の償却期間を短縮し、早期に償却を行った。

これらの対策を講じた結果、基準資産額は2,000万円を超え、無事に人材派遣業許可を取得することができました。

この事例から分かるように、繰延資産対策は、労働者派遣事業許可取得の成否を左右する重要な要素です。

まとめ

今回は、労働者派遣事業許可申請における基準資産額の要件と、繰延資産について詳しく解説しました。

繰延資産は、一見すると複雑で分かりにくい概念ですが、しっかりと理解し、適切な対策を講じることで、基準資産額の要件をクリアすることができます。

もし、繰延資産について不安がある場合は、専門家に相談することをおすすめします。専門家は、あなたの会社の状況に合わせて、最適な対策をアドバイスしてくれます。

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投稿者プロフィール

jinzaihaken
jinzaihaken
労働者派遣事業許可に必要な監査や合意された手続に精通し、数多くの企業をサポートしてきました。日々の業務では「クライアントファースト」を何よりも大切にし、丁寧で誠実な対応を心がけています。監査や手続を受けなくても財産的基礎の要件をクリアできる場合には、そちらを優先してご提案するなど、常にお客様の利益を第一に考える良心的な姿勢が信条です。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。