労働者派遣事業を始めるには? 許可取得の三大ハードルと成功への道
「人材不足に悩む企業と、仕事を探す個人を繋ぎたい」「より柔軟な働き方を社会に提供したい」――そんな熱い思いをお持ちの皆様、労働者派遣事業の立ち上げをご検討されていることと存じます。労働者派遣事業は、社会貢献性が高く、同時に大きなビジネスチャンスも秘めている魅力的な事業です。
しかし、その事業を始めるには、国の定める厳しい要件を満たした上で「労働者派遣事業許可」を取得することが必須となります。この許可なくして事業を行うことは違法であり、罰則の対象となりますので、決して見落とすことのできない最重要事項です。
「許可」と聞くと、難しそうだと感じる方もいらっしゃるかもしれません。確かに、労働者派遣事業の許可要件は多岐にわたり、細かな規定が設けられています。しかし、ご安心ください。これらの要件は、各都道府県の労働局に問い合わせれば丁寧に教えてくれますし、労働局のウェブサイトでは、要件を詳細に解説したPDFファイルをダウンロードして、いつでも確認することができます。
多くの要件が存在する中で、特に起業家にとって「越えにくいハードル」となりがちなものが、実務上、大きく分けて以下の3つに集約されます。今回は、これらの三大ハードルに焦点を当て、その乗り越え方と注意点について詳しく解説していきます。
労働者派遣事業許可取得の三大ハードル
- 財産的基礎の要件(「お金」に関するハードル)
- 派遣元責任者などの「人」に関する要件
- 事業所の「場所」に関する要件
ハードル1:財産的基礎の要件(「お金」に関するハードル)
これは、多くの事業者様がまず直面する、最も高いハードルの一つです。労働者派遣事業は、派遣スタッフの給与支払いや社会保険料の負担など、一定の資金力が必要とされる事業です。そのため、国は事業の安定性を担保するために、厳格な財産的基礎の要件を定めています。
具体的な要件は以下の通りです。
- 基準資産額が2,000万円以上であること
- 基準資産額とは、資産総額から負債総額を差し引いた額を指します。営業権などの繰延資産をカウントしないとか、細かな規定があるので、顧問税理士の先生に確認するのが無難です。また、2,000万円というのは事業所数が1箇所の場合であり、事業所数が増えればこの金額のハードルも上がります。あくまで、開業するための最低限のハードルが2,000万円なのです。
- その基準資産額が、負債の総額の7分の1以上であること
- 自己名義の現金・預金の額が1,500万円以上であること
- これは、事業に必要な運転資金を確保しているかを確認する要件です。
これらの要件は、許可申請を行う直前の本決算でクリアするのが理想です。クリアできない場合でも申請前の時点の月次決算でクリアしている必要があります。そして、許可取得後も、更新の度にこれらの要件をクリアし続けることが求められます。もし本決算でこれらの要件を満たせず、月次決算で満たせるといったギリギリの場合は、「監査」や「合意された手続」といった手続きを受ける必要が生じます。
【ここで注意!重要ポイント】 「2,000万円も貯金がないと始められないのか?」と心配される方もいらっしゃるかもしれません。確かに、この財産的基礎の要件は、新規参入を目指す方々にとって大きな壁となりがちです。しかし、諦めるのはまだ早いです。この点については、後ほど当事務所がご提供するソリューションについて触れさせていただきますので、ぜひ最後までお読みください。
ハードル2:派遣元責任者などの「人」に関する要件
事業の運営には、その業務を適切に管理・遂行できる人材が不可欠です。労働者派遣事業許可申請にあたっては、人に関する要件は非常に細かい規定が置かれているのですが、実務上、突き詰めると1名は常勤の人物、もう一人は非常勤の人物という2名体制がギリギリ最低限の人員構成になります。そして、このうち1名は派遣元責任者であることが求められます。
- 派遣元責任者:
- 労働者派遣法に基づく事業運営を適正に行うための責任者です。
- 許可申請時に1名以上の選任が義務付けられています。
- 選任された派遣元責任者は、厚生労働大臣が定める講習を受講し、その修了証を持っている必要があります。
- 事業主や法人の役員が兼任することも可能です。
【ここで注意!重要ポイント】 「人」に関する要件で特に注意していただきたいのは、以下の2点です。
- 履歴書の提出義務: 許可申請時には、派遣元責任者として選任する方など2名の履歴書を提出する必要があります。この履歴書には、職務経歴だけでなく、過去の経歴も詳細に記載することになります。
- 過去のトラブル歴の影響: 提出された履歴書の内容や、その他公的な情報から、過去に労働関係法令違反や人材派遣業におけるトラブルを起こした経歴がある場合、その内容によっては、許可が下りないケースがあります。これは、事業の適正な運営と派遣労働者の保護を重視する国の姿勢の表れです。万が一、過去に懸念される経歴がある場合は、事前に専門家にご相談いただくことをお勧めします。
これらの要件を満たす人材の確保は、事業の信頼性を左右する重要な要素となります。
ハードル3:事業所の「場所」に関する要件
労働者派遣事業は、派遣労働者の個人情報を扱うほか、面談やキャリアコンサルティングなど、プライバシーに配慮した環境が求められます。そのため、事業所の「場所」に関しても、以下のような要件が設けられています。
- 専有面積20平方メートル以上: 原則として、事業所として使用するスペースは20平方メートル以上の専有面積が必要とされています。これは、執務スペースと面談スペースを適切に確保するための目安です。
- 事業の適切な実施に必要な環境:
- 独立した区画であること:他の事業所や居住スペースとは明確に区切られている必要があります。他事業と兼業する場合も、パーテーションなどで明確に区分されていることが求められます。
- プライバシー保護への配慮:派遣労働者との面談や相談を行う際に、個人情報が漏洩しないよう、遮音性や見通しなどに配慮された個室やブースが必要となります。
- 情報管理の徹底:機密書類や個人情報が適切に保管・管理できるセキュリティ対策が講じられている必要があります。
- 通勤や事業活動に支障のない場所:公共交通機関からのアクセスが良く、派遣スタッフが安心して来社できる場所であることが望ましいとされます。
【ここで注意!重要ポイント】 特に起業を検討されている方には、以下の点に留意していただきたいです。
- オフィス選びの重要性: 起業時にオフィスを選ぶ際、単に家賃や立地だけでなく、「20平方メートル以上の広さが確保できるか」、「独立した区画として利用できるか」という点を必ず確認してください。広さが足りない、または他と混在するようなスペースでは許可を得ることができません。
- 自宅兼事務所の原則不可: 原則として、自宅の一部を事業所とすることは認められていません。これは、居住スペースと事業スペースの区別が曖昧になり、個人情報保護や独立性の確保が困難であると判断されるためです。例外的に認められるケースもありますが、非常にハードルが高いため、最初から事業専用のオフィスを構えることをお勧めします。
労働者派遣事業許可取得に向けたステップ
これらの三大ハードルをクリアした上で、具体的な許可取得の流れは、おおよそ以下のようになります。
- 事業計画の策定:どのような事業を展開するかを明確にする。とりわけ広告戦略については具体的な手法を明確化することが望まれます。
- 要件の確認と準備:財産、人、場所などの各要件をクリアするための準備を進める。場所については後で変更しにくいので特に注意する。
- 必要書類の作成・収集:労働局指定の申請書、添付書類(登記事項証明書、確定申告書、賃貸借契約書、履歴書など多数)を準備する。
- 労働局への申請:必要書類を揃えて、管轄の労働局へ申請する。
- 審査・現地調査:労働局による書類審査、場合によっては事業所の現地調査が行われる。
- 許可の取得:審査をクリアすれば、無事に許可が下り、事業を開始できます。
このプロセスは、多くの書類作成や関係各所との調整が必要となり、専門知識も求められます。手前どもがお勧めしているのは、労働者派遣事業許可申請を代行してもらう社会保険労務士法人兼行政書士法人に、会社設立前から助言をもらうことです。登記申請する前に、会社の目的に労働者派遣事業を書いておかないといけませんとか、本店だけで営業するなら、その本店として賃借するオフィスの面積は20平米なければいけませんといった細かな条件をあらかじめクリアしていかなければ、どれかひとつがクリアできないだけで許可申請ができなくなってしまうからです。労働者派遣事業の許可申請に精通した社会保険労務士法人兼行政書士法人は都内にいくつもございますが、もしご要望がございましたらご紹介させていただきます。ご紹介料は頂戴しません。
「2千万円の貯金がない」と諦めている方へ:当事務所のソリューション
ここまでお読みいただき、「財産的基礎の要件が一番のネックだ」、「2千万円も貯金がないと、人材派遣ビジネスは始められないのか」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、まとまった資金を用意することは、特に起業家にとって大きな課題です。しかし、ご安心ください。当事務所では、「2千万円の貯金がないけど、人材派遣ビジネスを始めたい」というお客様のために、資金なしでも開業を可能にする、独自のソリューションを提供しております。もちろん、監査も不要です。
私たちは、単に許可申請をサポートするだけでなく、お客様一人ひとりの状況に合わせた資金調達、事業計画の立案、法人設立から許可取得後の運用まで、社会保険労務士法人や不動産会社などの協力を頂きながら包括的なサポートを通じて、お客様の夢の実現を強力に後押しいたします。
「お金がないから無理だ」と諦める前に、まずは一度、当事務所にご相談ください。経験豊富な専門家が、お客様の状況を丁寧にヒアリングし、最適な道筋を一緒に見つけ出すお手伝いをさせていただきます。
まとめ
労働者派遣事業の許可取得は、決して容易な道ではありません。特に「財産的基礎」、「人」、「場所」という三大ハードルは、事前の綿密な計画と準備が不可欠です。しかし、これらの要件を正しく理解し、適切な対策を講じれば、許可取得は十分に可能です。
私たちは、お客様がこれらのハードルを乗り越え、無事に労働者派遣事業をスタートできるよう、許可申請のプロフェッショナルとして全力でサポートいたします。
ご不明な点やご不安な点がございましたら、どんな些細なことでも構いませんので、ぜひお気軽にお問い合わせください。お客様からのご連絡を心よりお待ちしております。
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投稿者プロフィール

- 労働者派遣事業許可に必要な監査や合意された手続に精通し、数多くの企業をサポートしてきました。日々の業務では「クライアントファースト」を何よりも大切にし、丁寧で誠実な対応を心がけています。監査や手続を受けなくても財産的基礎の要件をクリアできる場合には、そちらを優先してご提案するなど、常にお客様の利益を第一に考える良心的な姿勢が信条です。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。