中退共が原因で労働者派遣事業の許可更新が危うくなった話|財産的基礎の要件と節税の関係
「うちの会社、労働者派遣事業の許可更新が通らないかもしれない…」
ある日、都内で人材派遣会社を経営するA社の社長は、社会保険労務士法人から衝撃的な連絡を受けました。
「基準資産額が足りていません。中退共の掛金が資産として認められないのが原因です」
A社は頭を抱えました。
「中退共は節税に良いと聞いて導入したのに、なぜ?」
実は、中退共は掛け金を費用処理することを目的として導入されることが多いため、労働者派遣事業の許可更新に必要な基準資産額の計算から除外されてしまうのです。
中小企業退職金共済制度(中退共)とは何か
「中退共」とは、中小企業退職金共済制度の略称です。中小企業が従業員の退職金を積み立てるための制度で、会社が拠出した資金を税制優遇措置を受けながら積み立て、従業員の退職時に退職金として支払う仕組みです。 多くの企業にとって、中退共は魅力的な節税策として知られています。 会社は拠出金を損金算入できるため、法人税負担を軽減できるのです。 従業員にとっても、退職金を受け取れるというメリットがあります。
中退共のメリットとデメリット
中退共のメリットは、以下の通りです。
- 節税効果: 会社にとって最大のメリットは、法人税の節税効果です。 拠出金が損金算入されることで、税負担を軽減できます。
- 手続きの簡便さ: 導入手続きが比較的簡単で、専門知識がなくても利用できます。
- 運用管理の手間が少ない: 運用管理は中退共が担うため、会社は掛け金を拠出するだけで済みます。
しかし、中退共にはデメリットも存在します。
- コストパフォーマンスの悪さ: 最低掛け金が設定されているため、従業員数が多い場合、負担が大きくなる可能性もあります。 月5,000円/人の固定費が発生(年間60,000円/人)しますので、会社にとって負担は軽くありません。利率も低く、運用益は期待できません。過去には利率0%の年もあり、運用益に期待するものではありません。
- 柔軟性の低さ: 制度設計は厚生労働省が定めているため、企業独自のニーズに合わせた柔軟な対応ができません。 例えば、従業員数減少時における掛け金調整などは、制限が多いです。
- 従業員のモチベーション向上に繋りにくい: 給与明細に記載されないため、従業員が退職金の存在を意識しにくく、モチベーション向上に繋がりにくい可能性があります。
- 掛け金が無駄になる可能性: 加入期間が短い場合、掛け金が全く還元されない、または拠出額を下回る金額しか支給されない可能性があります。短期退職者についての取り扱いは特に考慮が必要です。1年未満で退職 → 掛金は全額没収(退職金ゼロ)、1年以上2年未満 → 掛金総額の一部しか戻らない、2年以上3年6ヶ月未満 → 掛金相当額のみ支給(利息なし) これらの条件を勘案しますと、 短期離職率が高い業種では、企業の掛金が無駄になる可能性大と言えるでしょう。
基準資産額不足と中退共の関係
A社は、長年中退共を利用して節税効果を得てきました。 しかし、このことが今回の基準資産額不足に繋がったのです。
労働者派遣事業許可の更新には、一定の基準資産額を満たすことが必要です。 この基準資産額は、事業の健全性を確保するための重要な要件です。 A社の場合、中退共に積み立てた資金は、貸借対照表上の資産として計上されないため、基準資産額の計算に含まれず、結果として不足に陥ってしまったのです。 中退共は、税務上は損金として処理されますが、会計上は資産として計上されないため、許可更新に必要な基準資産額には反映されない点が盲点でした。
労働者派遣事業許可における財産的基礎の要件
労働者派遣事業許可では、事業の財産的基礎の要件として、一定の基準資産額が求められます。 これは、事業が継続的に運営できるだけの財産的基盤があることを示すためです。 具体的には、許可申請時に必要な基準資産額は、事業所数によって異なります。 A社の場合、中退共への積み立ては、この基準資産額に算入されなかったため、許可更新に必要な額を下回ってしまったのです。
中退共と労働者派遣事業許可:相性の悪さ
A社の経験から明らかなように、中退共は労働者派遣事業許可の更新において、必ずしも有利に働くとは限りません。 節税効果は魅力的ですが、基準資産額の不足というリスクも同時に抱えることになります。 財産的基礎の要件を満たすためには、現金、預金などの流動資産が重要な要素となります。 中退共への拠出金は、将来の退職金支払いに充てられるものの、すぐに換金できる資産ではありません。 そのため、許可更新の際には、中退共の積み立て額はプラスにはたらきにくいのです。
中退共は、中小企業にとって非常にメジャーな節税策です。 多くの企業が、税負担軽減のために中退共を利用しています。 しかし、A社の経験は、中退共の利用が常に最適な選択とは限らないことを示しています。 特に、財産的基礎の要件を満たす必要がある事業、例えば労働者派遣事業を営む企業にとっては、中退共の利用はリスクを伴う可能性があります。
基準資産額不足への対策
中退共は、節税効果の高い魅力的な制度ですが、労働者派遣事業許可を受けながらも、財産的基礎の要件が厳しい事業を営む企業にとっては、必ずしも最適な選択肢とは言えません。
税制優遇の甘い言葉に誘われ、節税対策として導入した中退共。 それは、あなたにとって、一見最高の選択に見えたはずです。 しかし、その裏には、想像を絶するリスクが潜んでいたのです。
中退共の拠出金は、残念ながら、労働者派遣事業許可の基準資産額には算入されません。 つまり、あなたの努力の結晶、血と汗の結晶は、許可更新の審査では、まるで存在しないかのように扱われるのです。
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基準資産額を十分に満たし、財産的基礎の要件をクリアした企業を買収することで、あなたは、労働者派遣事業許可の更新を確実にクリアできます。 しかも、節税対策として導入した中退共はそのまま維持できます。
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投稿者プロフィール

- 労働者派遣事業許可に必要な監査や合意された手続に精通し、数多くの企業をサポートしてきました。日々の業務では「クライアントファースト」を何よりも大切にし、丁寧で誠実な対応を心がけています。監査や手続を受けなくても財産的基礎の要件をクリアできる場合には、そちらを優先してご提案するなど、常にお客様の利益を第一に考える良心的な姿勢が信条です。お困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
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